2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24330110
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
津谷 典子 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (50217379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒須 里美 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (20225296)
速水 融 慶應義塾大学, 経済学部, 名誉教授 (40051164)
斎藤 修 一橋大学, その他部局等, 名誉教授 (40051867)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経済史 / 歴史人口学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究には、①個人・世帯(ミクロレベル)の人口行動と地域経済との関係の多変量解析、②町村(メゾレベル)の人口規模・構造と町村の石高の積み上げによる全国・地方(マクロレベル)の人口とGDP・GRPの時系列変化の推計、③近世日本の人口・経済史データベースの構築・拡充と国際的ネットワークの構築、の3つの柱がある。 本年度(平成26年度)は、①については、過去3年間に行った個々の男女の結婚行動と世帯構造と地域経済の動的関係についての多変量解析結果をまとめて国際学会で報告し、それに基づいた英文図書を出版した。また、世帯と地域経済に注目して、世帯のライフコースの決定要因についての多変量解析を行った。 ②の町村の人口と石高からGDP・GRPの時系列変化の推計については、一昨年より続けている約480町村の人口史料の石高記載の判別とデータ整理を継続し、本年度末までにおよそ200村における石高記載の確認・整理を終えた。このデータを用いて石高記載の内容を検討した結果、推計のベンチマーク期間を18世紀半ばと19世紀半ばの10~15年間に決定し、この期間における町村の人口統計データを整理・入力中である。 ③については、近世日本人口史料データベース拡充のために、東北地方の5つの村の長期データを統一した形式にまとめ、これらを用いて分析のための変数構築を行うシステムの開発を試みた。また、史料検索プログラム・コンテンツのエラーの修正と情報の更新を行った。これにより分析に使用できる史料画像媒体は33,109史料・年に拡充された。さらに、歴史人口経済統計データベースの国際ネットワーク化のために、同様の統計データベースをもつ香港科技大学で開催された国際ワークショップに出席し、交流・協力を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の3つの目的の第1である個人・世帯(ミクロレベル)の人口行動と地域経済の多変量解析については、本年度結婚行動についての分析結果をまとめた英文図書を出版した。昨年度は出生力と世帯構造と地域経済についての英文論文を国際学会で報告し、また飢饉による地域経済ストレスの死亡率と人口移出確率への影響についての英文論文を国際学会で報告した。さらに、人口移動と世帯の社会階層についての英文論文が査読付きで国際学術雑誌に掲載された。 第2の目的である町村の人口と石高の統計データ構築と時系列推計については、18世紀半ばと19世紀半ばの10~15年間に同一もしくは類似した形式の史料をもつ約200村についてデータの整理・入力を行った。人口データと比較して、石高に代表される経済データはその質と内容にばらつきがあり、統一した形式の時系列データの構築に予想したよりも長い時間がかかっているが、次年度前半にはデータの構築を終え、後半には時系列推計を完成させる予定である。 第3の目的である近世日本の人口経済データベースの拡充については、より簡易に変数構築を行うシステムの開発を行い、史料検索プログラムの更新を行ったため、史料内容のチェックと修正を比較的容易に行うことができるようになった。これにより、当初計画したいた人口史料(宗門人別改帳)のデータ入力の大部分を完了し、データ内容のチェックを進めることができた。さらに、入力データの抽出と人口イベントのカテゴリー化を図ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、①個人(ミクロレベル)の人口行動と世帯構造および地域経済との関係の多変量解析、②町村(メゾレベル)の人口規模・構造と町村の石高の積み上げによる全国・地方別の人口とGDP・GRPの時系列変化の推計、③近世日本の人口・経済史データベースの構築・拡充と国際的ネットワークの構築、を目的としている。 研究最終年である本年度は、①の個人・世帯の人口行動と地域経済の分析については、特に世帯に注目して行った解析結果をまとめ論文を完成させる予定である。また、過去3年間に行った個人の人口行動と世帯構造と地域経済の動的関係についての解析結果をまとめる。②の町村の人口と石高を積み上げ全国・地方の人口と経済の時系列変化の推計を完成させる。①と②の分析結果をまとめることにより、ミクロレベルの人口行動の決定構造にメゾレベルの経済がどのようにかかわっていたのか、そしてメゾレベルとマクロレベルの人口と経済はどのように結びついていたのかを検討し、ミクロ・メゾ・マクロの3層からみた人口変動と経済の関係を総括する。③についても、過去3年間に行った歴史人口・経済統計データベース構築・拡充の結果を、本研究の総括に反映させる。
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Causes of Carryover |
個人・世帯(ミクロレベル)の人口行動と地域経済の動的関係についての研究報告のための国際会議出席費用を計上していたが、多変量解析とそれを基にした英文論文執筆に時間を要したため、国際学会での研究報告を次年度まで延期した海外旅費に余剰が生じた。また、町村(メゾレベル)の人口と石高データの推計のために必要な時系列統計データ構築に必要な人口経済史料についての知識と経験を積んだマンパワーの確保が十分にできなかったため、謝金にも余剰が出た。以上のような理由で次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は本研究の最終年度であり、個人の人口行動と世帯構造と地域経済の関係についての多変量解析結果をまとめ、その成果を研究代表者と分担者が複数の国内および国際学会で報告する計画である。そのうち一部は既に国内および海外の学会での研究報告が決まっており、このための旅費に次年度使用額を充てる計画である。また、町村人口と石高の時系列統計データ拡充のためのマンパワーも確保する予定であり、次年度使用額の一部をその謝金に充てる計画である。
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