2013 Fiscal Year Research-status Report
持続可能性に向けたイノベーション・システムの構造・機能・進化:データ駆動型分析
Project/Area Number |
24330115
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鎗目 雅 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部, 特任准教授 (30343106)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サステイナビリティ / イノベーション / データ駆動型 / 知識 / ネットワーク |
Research Abstract |
近年世界的にエネルギー・水・食料などの資源の制約の下、地球レベルにおける持続可能性(サステイナビリティ)に関する懸念が強まってきている。こうした技術、経営、政策、制度が相互に関わる複雑な問題に対しては、各ステークホルダーがそれぞれ単独で対処していくことが非常に困難であり、ネットワークを通じて多様な主体が共創的に取り組むことにより、社会レベルでのイノベーションを創出していく必要がある。サステイナビリティの追求においては、大学・企業・公的機関などが連携して戦略的な取り組みを行うことで、長期的かつ包括的な観点からイノベーションを創出し、環境保全に貢献しつつ産業競争力を両立させることが課題となっている。本研究では、関連する多様なアクターの間での有機的な連携を通じて、科学技術的知識をユーザーのニーズと組み合わせて新しい機能を生みだし、制度に影響を与えながら広く社会で活用していくイノベーション・システムの構造・機能・進化を分析してきた。近年急速に蓄積され入手可能になった自然環境、科学技術、経済、社会などに関する様々なデータ・情報を活用し、イノベーションのプロセスにおける各フェーズとその関係に関する詳細な分析を行っている。科学、工学、社会科学、人文学において蓄積された知見を学融合的な観点から取り入れ、データ駆動型の方法論を開発し、様々なデータを収集し駆使するアプローチを学術的に探求・深化することで、技術・戦略・制度を組み合わせてイノベーションを創出するデザインとアクション・プランを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに得られた結果を基にして、科学論文、特許、製品、社会的反応などに関わるデータベースを構築し、大学・企業・公的機関などの間の連携ネットワークをマクロ的に分析するとともに、各アクターからのインタビューを通じてミクロ・レベルの情報収集を行い、企業戦略・公共政策・制度設計の観点から、日本・欧州・中国を含めた国際比較分析を行っている。データベースを基にしてアクターを特定し、その活動を基礎研究・製品開発・社会での実用化という形で時系列に追跡することにより、アクター間での共同活動に着目したネットワーク構造を形成し、それぞれの構造・機能・進化の相違をシステム的に分析している。イノベーション・システムを構成する要素として、知識、アクター、制度を想定し、その構造・機能・進化を同定して理論的なモデルの形成を目指している。マクロなデータ分析とミクロ・レベルでのインタビューなどで得られた情報を基にして、各国・地域のデータに応用することで、社会的・文化的に異なる条件でイノベーション・システムのメカニズムがどう異なるのか、実証的な検証を行っている。国・地域間でのイノベーション・システムの親和性、その相互作用を通じた変動を理解することで、日本の優れた技術が海外でも有効に活用されるための可能性と課題も明らかになる。科学的価値、企業利益に関する経済的価値、サステイナビリティなどの社会的価値の効果的な組み合わせがどのように行われるのか、大学の研究者が中立的な立場から新しい科学技術の評価・標準化を先導することができるのか、新しい科学技術が環境保全のような社会的機能へ展開される際の産学官のそれぞれの固有の役割は何かなど、様々な側面について日本を含めたアジア・米国・欧州の国際比較を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロ的な構造に関する理解と、ミクロ・レベルの具体的な個別情報を基にして、学融合的な分析を進めるための学術的な方法論の開発を行うことが求められている。ネットワークの形成がサステイナビリティに向けたイノベーションの創出、その結果としての産業競争力にどのような影響を及ぼしているか、また新しい科学技術の評価・標準化、知的財産権の活用・管理をどうすべきかなど、より実際的な問題に関する検討も行う。地球温暖化、生物多様性、物質循環などの問題においては、国際的なネットワークの形成が行われつつあり、そうしたチャネルを通じた知識の生産・伝達・活用がグローバルなレベルにおける技術と制度の共進化へ与える影響に関するインプリケーションも議論する。得られた知見を総合し、将来へ向けて企業戦略、公共政策、制度設計に関する有効な提案を行うことが期待される。データ駆動型の分析とデザインに関わる学術的検討と体系化を踏まえて、実際にデータ・情報の効果的な活用を通じて、社会における価値創造につなげる方法論の開発とその実践につなげる予定である。データ・情報・知識がどのような役割を果たしているのか、産業界でのベスト・プラクティスに関する実証的な検証も行う。従来の学問分野の枠組み・知見を踏まえた上で、新しいデータ駆動型デザインの学術的な意義付け及び方法論を確立していくと同時に、公共的・長期的観点から知的インフラストラクチャーを整備・維持し、地球レベルでの持続可能性へ向けた社会イノベーションの促進の制度設計を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に購入を予定していた書籍やデータなどの出版が遅れたりしため、次年度に繰り越しを行った。また海外で予定していた情報収集に関して、先方の都合などにより、次年度に繰り越しを行った。 次年度は、当該年度に予定していた書籍やデータなどを購入し、また海外での情報収集を行う予定である。また、研究成果の発表を海外の国際学会で積極的に行う予定である。
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