2012 Fiscal Year Annual Research Report
国際標準化への企業の対応戦略とそれによるエコシステム形成の研究
Project/Area Number |
24330117
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
安本 雅典 横浜国立大学, 環境情報研究院, 教授 (40293526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
糸久 正人 東京大学, 大学院・経済学研究科, 助教 (60609949)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 標準化 / (ビジネス)エコシステム / コンセンサス標準 / 実装 / 製品開発 / 知的財産 / 企業間ネットワーク / プラットフォーム |
Research Abstract |
平成24年度には、本研究では、役割の異なるプレーヤーが、いかに標準化にかかわるエコシステムを形作っているのかについて、試行的に検討した。より具体的には、まず、自動車制御や携帯端末について、標準化コンソーシアムへの参加や取引についてのデータを検討することで、標準の普及においては当初の技術開発や標準化の担い手以外の多様なプレーヤーの参入により、技術開発、標準化、実装支援、実装による製品開発といったレベルに応じた企業間分業が進み、エコシステムが発展することを仮説的に確認した。一方で、欧州における電気自動車の標準化に関わるプレーヤー間の相互ネットワークを検討することで、一部のプレーヤーが産業や国・地域をつなぐ役割を果たすことにより、様々なプレーヤーから成るエコシステムが成立しつつあることを明らかにした。 本研究では、これらの検討と並行して、企業レベルの戦略についても検討を進めた。具体的には、主として自動車制御の分野についての特許データを用い、標準化への対応が企業の規模(特許に代表される保有知識)などの背景により異なることや、技術開発上のネットワークにおける役割やポジションの違いが、企業間ならびに企業グループ間で生じていることを示した。 以上の検討を通じ、標準化に関わる技術開発、コンソーシアムによる標準化、そして実装による普及といったレベルに応じて、異なるプレーヤーが各々役割を担うなかで、エコシステムが成り立つことを整理した。さらに、標準化そのものというよりは、技術開発や実装を通じて、役割やポジションの異なる企業が互恵的に結び付くことで、標準化によるエコシステムの発展を促すことを確認した。こうした成果は、標準化によるエコシステムの成り立ちについて、理論、実証両面での研究に貢献するのみならず、国際標準化への対応が迫られている日本企業に対して実務的な示唆を提供すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査、データの収集・蓄積・分析、および先行研究確認を進めることにより、基本的な枠組みに見当をつけ、逐次、途中成果を出版物刊行や学会発表の形式で発表することができた。また、(未記載ではあるが)査読論文投稿、次年度以降の海外学会(AOM : Academy of Management)でのワークショップ開催と発表、関連書籍2冊の出版企画に結びつけることができた。これらの点から、ほぼ所期の計画通り研究を実行できたと考え、(2)とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、データの確認と追加収集を進めるとともに、多岐にわたるデータや先行研究の整理を進めることで、データを先行研究と関連づけてより系統的かつ詳細に検討する。とくに、枠組みと分析の精緻化を図りながら、標準化の進展にともなう企業の変遷、企業間分業、これらに関わる企業の戦略について分析を深める。また、途中成果を国内外で積極的に発表することで、フィードバックを得て、研究を洗練させていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は企業等の協力により効率よくデータを収集できたことから(旅費、人件費・謝金分)、次年度使用の助成金が生じた。次年度は、調査、データ収集、およびデータ蓄積・分析をとともに、関連文献の系統的な検討をさらに進め、それらのデータ・ベース化と分析を進める。また、国内外で出版物や発表というかたちで、途中成果の発表を引き続き進めていく。これらの作業のために、旅費、謝金、消耗品費を中心に、経費を使用する。
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