2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24330123
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
須田 敏子 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (70387992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八代 充史 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (40286620)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人事制度 / 組織フィールド / 技術環境 / 制度環境 / 制度企業家 / 制度ロジック / 制度的同形化 / 正当性 |
Research Abstract |
本研究は種々の制度組織論に基づき理論的フレームワークを設定。人事制度の形成・定着・変化の複雑なメカニズムの分析を目的としている。本研究では、個別企業に影響を与える外部環境として、制度組織論が主張する組織フィールドの概念を導入。各組織フィールドによって特有の人事制度の特色が存在し、個別企業の選択はその企業が属する組織フィールドの特色に影響を受けるとの立場をとる。同時に組織フィールドに定着した人事制度の特色の変化も念頭においているが、変化のメカニズムは複雑であり、その複雑な変化メカニズムの分析も目的としている。変化メカニズムの分析には、個別企業が組織フィールドに対する影響も含まれ、外部環境としての組織フィールドと個別企業の影響は相互関係であるとの立場をとる。 本研究では、国・産業セクターという2つのレベルの組織フィールドを設定し、同一組織フィールド内の企業間、異なる組織フィールドの企業間での人事制度の比較を通じて、組織フィールドと個別企業の影響関係を分析する。 2012年度の研究スタート時から、国レベルとして日本をとり、産業レベルでは、製薬、金融、自動車、電機の4産業セクターを対象に定性ケーススタディを中心に調査を行ってきた。その結果、日本という国レベルでの組織フィールドでは同じであっても、産業によって人事制度に違いがあることがわかった。 過去2年間にわたり、調査の結果を書籍、論文、学会などを通じて発表してきた。金融を担当している連携研究者の山内麻理氏が、2013年3月にその結果を書籍として発表したが、2013年度に同書籍が「2013年度労働関係図書優秀賞」を受賞し、高い研究成果が認められる結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
国・産業セクターの2レベルの組織フィールドにおける人事制度分析をテーマに、国レベルでは日本を、産業セクターレベルでは製薬・金融・自動車・電機の4産業について調査研究を行っている。これにより、2012年度の初年度から2年間で当初設定した研究計画はかなりの進捗をみせている。2014年度には研究の中間成果的な書籍を、代表研究者の須田敏子と連携研究者の山内麻理氏の2人が発行する予定にしており、現在、執筆に入っている。2014年度以降も、これまでに調査研究を進めている4つの産業セクターに関する研究を一層進展していくと同時に、必要に応じて他の産業セクターにも調査範囲を拡大していく予定である。 さらに研究代表者の須田敏子により、2013年度には以下の2つの方向で、当初計画した研究領域を超えて、研究を拡大している。 第一が、国レベルの組織フィールドとして設定している日本を対象に、日本企業全体としての人事制度変化の分析である。具体的には、人事部・コア事業部トップ・コア事業部従業員という3つのアンケートサーベイに基づいて、定量的実証分析を2013年度に開始した。現在、第一段階の分析として能力開発施策と財務業績の関連について、重回帰分析・分散分析などを行って統計分析を行っている。 第二が、社員意識に関する国際比較研究への参加である。ロシア・ドイツ・スイス・日本の4か国で実施する国際アンケート調査に参加を決め、2013年度に調査開始のための準備作業を進めており、2014年度にはアンケート調査を実施の予定である。 以上の2点は、科研費研究のスタート時には予定されていなかった調査内容であり、科研費研究は、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は大きくわけると以下の3方向で進んでいる。第一が、日本の中の産業セクター間の人事制度比較である。この分野では、定性ケーススタディを中心に対象産業の労働者グループインタビューなど他のメソッドも活用して、調査研究を継続して行っていく。現在は4つの産業セクターを対象としているが、必要に応じて産業セクターの数を増やしていく。研究成果発表に関しては、すでに2012年度・2013年度から行ってきており、2014年度以降も書籍・論文・学会発表の3方面で積極的に成果発表を行っていく。なお、論文・学会発表については、国内外の両方で実施していく。2014年度に関しては、研究代表者の須田敏子と連携研究者の山内麻理氏が共同で書籍を発行の予定。第二が、国レベルの組織フィールドである日本全体と対象とした研究である。人事部・コア事業部トップ・コア事業部従業員の3つのアンケートサーベイに基づく定量分析である。2013年度から統計分析を開始しており、2014年度には、論文執筆を行う予定。最初は学会発表、次いで学術ジャーナルへの論文投稿の順序を想定している。分析しているアンケートサーベイは、3アンケートで質問項目が349項目、アンケート回収数が約8000という膨大な内容であり、多角的な分析が可能なデータである。今後数年間にわたり、理論・統計手法の双方の面で、多方面から分析していく予定。 第三が、従業員意識に関する国際比較アンケートへの参加である。2014年度にはアンケートを実施し、第一次の調査結果を発表していきたい。 以上のとおり、3方向で調査は進展しているが、今後さらに方向性が増える可能性もある。2014年度はすでに進展している3方向と新たな方向の模索の両面から調査研究を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の須田敏子が2013年9月~2014年8月のサバティカル期間中に海外現地調査・海外学会発表とともに学期期間中に参加できない海外学会への参加などを予定して、2013年度・2014年度の科研費を申請していた。だがサバティカル期間中の2013年9月~2014年3月に、当初予定していなかった2つの新展開があったため、海外出張回数を少なくした。これが次年度使用額が発生した主な理由である。2つの新展開の内容は、(1)日本企業の人事制度変化に関する定量分析、(2)従業員意識に関する国際比較研究への参加、である。 これら2研究領域が加わったために、(1)に関しては日本において分析・論文執筆準備、(2)に関しては日本で国際比較研究参加の準備を行う、という2つの研究が加わった。つまり、当初予定以上に研究が進展したために、日本での研究量が増えて、海外出張が減ったことが、次年度使用額が生じた主な原因である。 繰り越し分の科研費は、海外出張費を中心として2014年度以降の科研費期間中に使用していく予定。具体的な内容は以下のとおり。(1)2013年度に新たな研究領域が加わったため当初予定の海外出張の回数が減った。だが、日本の人事制度変化分析に関する定量分析が進展しており、2014年度後半から海外学会発表を予定しているため、海外出張費用が発生する。分析には新たに研究協力者を加えており、同研究協力者の海外出張費用も発生する可能性あり。(2)準備を進めている従業員意識の国際比較研究について2014年度後半以降から結果を発表するべく、共同研究者との打合せなどで海外出張費が発生する予定。(3)連携研究者の山内麻理氏が、ドイツでの現地調査を予定しており、海外出張費が発生する。なお、アメリカ在住の山内麻理との打ち合わせ回数も増えることが予想され、この面でも山内麻理氏の海外出張費用が増加する可能性がある。
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Research Products
(11 results)