2013 Fiscal Year Annual Research Report
会計情報の開示とショートターミズム(近視眼的経営)の関係性についての多面的研究
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24330139
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
伊藤 邦雄 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (60134889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦崎 直浩 近畿大学, 経営学部, 教授 (60203600)
大塚 成男 千葉大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (20213770)
中條 祐介 横浜市立大学, 国際マネジメント研究科, 教授 (40244503)
梅原 秀継 中央大学, 商学部, 教授 (40282420)
中野 誠 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (00275017)
太田 浩司 関西大学, 商学部, 教授 (70366839)
加賀谷 哲之 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (80323913)
野間 幹晴 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 准教授 (80347286)
川島 健司 法政大学, 経営学部, 准教授 (80406652)
矢澤 憲一 青山学院大学, 経営学部, 准教授 (70406817)
円谷 昭一 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (90432054)
鈴木 健嗣 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00408692)
鈴木 智大 亜細亜大学, 経営学部, 講師 (50609021)
金 鉉玉 東京経済大学, 経営学部, 准教授 (40547270)
越智 学 大分大学, 経済学部, 講師 (90613844)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ショートターミズム / 業績予想 / リスク情報 / 四半期情報 / 公正価値 |
Research Abstract |
平成25年度においては、先行研究において主に検討されていた、①株式市場からのプレッシャーや開示情報、業績ガイダンスなどが企業の短期志向に与える影響について、実験アプローチやサーベイ調査による検討、②経営者による業績ガイダンスやアナリストによる業績予想の存在が投資行動に与える影響をアーカイバルデータに基づき検証、③公正価値会計が企業の短期志向に与える影響をアーカイバルデータに基づく検証などは実践されているものの、その多くは国外企業を分析対象としたものであるのが現状であり、その仮説が日本企業の直面する現状と共通とは限らない。このため、平成24年度に企業の財務・会計担当責任者に対して実施したアンケート調査を詳細に解析し、日本企業におけるショートターミズムの原因を模索し、それに基づき、会計情報が日本企業のショートターミズムに対する意識や行動に対する影響を検証するためのデータベースの取り組み、その仮説の構築を行い、実際に各研究分科会にて日本企業を分析対象とした会計情報の開示とショートターミズムの関係性について検討した。 日本企業を他国企業と比べると、経営者報酬は低水準であり、M&A等の頻度も少ない。経営者コントロールの市場が十分に発展していない傾向がある。にもかかわらずインタビュー調査や質問調査に基づけば、日本企業にも短期志向の波が押し寄せていることが確認できる。平成25年度では、この両者のギャップを埋める因子の特定のため、他国に比べて多くの企業が実践している経営者の業績予想の特徴・傾向(達成度やストレッチ度、保守度、アナリスト予測への影響)とそれに影響を与える決定因子の特定を行った。さらに四半期決算の制度導入前後におけるリスクテイク行動の変化などの国際比較を通じて、日本企業の経営行動への影響を検討し、国内外の学会で報告、その一部を英文書籍・論文、和文書籍・論文などの形式で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、会計情報の開示と近視眼的経営(ショートターミズム)の関係性を多面的観点から実証的に検討すること、並びに持続的な企業価値の創造のために会計情報が果たすべき役割について考察することである。このため、平成24年度は先行研究のレビューとそれに基づくデータベースの特定、平成25年度は日本企業固有の短期志向の要因の特定とそれに基づく仮説の設定、実証研究の蓄積を進めた。 研究活動はおおむね順調に推移しているが、研究計画書では平成25年度予定であった、企業の短期志向をめぐるリスク管理担当者、環境・CSR担当者などへの質問調査についての実施が現時点では実施されていない。これは、各部署における質問調査よりはむしろ企業全体の短期志向の原因を明確にすることを優先し、企業の財務・経理担当責任者への調査を優先して行ったためである。加えて、リスク管理および環境・CSRについてのデータベース構築にあたって、基礎となる商用データベースの整理やそれに基づく質問項目の特定をこれまで優先して行ってきたためである。 また問題意識は共有しつつも、各分科会・研究者ごとで研究活動を優先して実施してきたため、本事業全体としてどのような示唆を獲得できるかという議論については十分に検討されているわけではない。
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Strategy for Future Research Activity |
本事業はおおむね順調に推移し、研究成果を書籍・学術雑誌・国内外での研究プロジェクトの報告など進めてきた。また研究成果の一部は、研究代表者が座長をつとめる経済産業省の研究プロジェクトの中にも組み込まれ、日本国内ばかりではなく、世界に向けて発信が進められている。一方で、(1)リスク管理担当者および環境・CSR担当者に対する質問調査、(2)各研究分科会で横断的な研究成果の統合や全体としての示唆の共有、などについての取り組みは十分に進められていないのが現状である。(1)については、これまでの先行研究やデータベースなどの整理に基づき、早急に質問調査を実施する。また(2)については研究分科会横断の全体会議を開催していくほか、研究分科会のとりまとめ役相互間と研究代表者との情報共有や議論の場を増大させていく他、研究成果を統合した報告書や書籍を作成するなど、全体としての成果を意識した活動を増やしていくことで対応していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
リスク管理責任者およびCSR責任者に対する質問調査について、(1)まずは企業全体のショートターミズムの実態を明らかにするため、財務・経理責任者に対する責任者の調査を優先して実施し、その整理を優先して行った、(2)リスク管理およびCSRに関する商用データベースの整理に時間がかかった、の2点から平成25年度には調査を実施しきれなかったため、平成26年度に延期した。 企業には多くの研究機関から質問調査票が届くという実態もあり、加えて繁忙期における調査は回収率が下がるという特徴を持つ。このため、それぞれの責任・担当者が一定の時間を取れると予想される夏時期(8-9月)、秋時期(10-11月)までに調査項目を整理し、調査を実施、冬時期まで集計を行い、平成26年度中に分析へと反映させていく。
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Research Products
(22 results)