2013 Fiscal Year Annual Research Report
社会貢献事業を基盤とした社会的就労による自立支援に関する研究
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24330172
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
下村 幸仁 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (20412942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五石 敬路 大阪市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (30559810)
畑本 裕介 山梨県立大学, 人間福祉学部, 准教授 (50523544)
高間 満 神戸学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30326475)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 公的扶助 / 自立支援 / 社会的企業 / 機能分化 |
Research Abstract |
本研究は、生活保護制度に該当しないか、もしくは生活保護申請の意思のない生活困窮者に対し、社会貢献事業を基盤とする社会的就労を通じた就労自立支援の在り方、特に就労自立の前段階としての社会的就労の場の有効性について実証することを目的として実施した。 本年度、韓国調査に関しては、1.京畿道において地域自活センターや社会的企業の支援者側に対する希望リボンプロジェクト等のヒアリングを実施した。就労自活成功率が高い要因として、保護の停止や目標数値を掲げ、それを達成できない場合には財政的ペナルティが発生することなどを確認した。2.「社会的企業」および2012年に新しい事業形態として成立した「社会的協同組合」への移行が進んでいる地域自活センターについて調査し、その要因調査をソウル市庁社会的経済課で行った。そして、3.社会的経済のシステムに関し、ソウル社会的経済支援センターを視察しヒアリングを行った。また、4.扶助単給化が始まった国民基礎生活保障法の議論過程を調査した。さらには、5.2014年1月から新しくモデル事業として始まった韓国版「生活困窮者自立支援事業」である「希望ケアシステム」(Hope Care System)について、日本の研究者として初めて南楊州雇用福祉総合センターでヒアリング調査を行った。6.「社会的企業」の実態をより理解するためにフランスを視察し、主に若年層を対象とするフランスの公的扶助であるRSA(就業連帯所得)における就労支援との関連性についてもヒアリングを行うことができた。 一方、日本国内においては、7.生活困窮者自立支援法の成立によるモデル事業の実施状況について、NPO法人やワーカーズコーポなどや生活保護の自立支援プログラムを先駆的に実施している自治体について調査を実施した。 生活困窮者自立支援制度の2015年度本格実施を間近に控え、本研究の意義は強まっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
韓国調査に関しては、就労自活成功率の高い京畿道等において地域自活センターや社会的企業の支援者側に対する希望リボンプロジェクト等のヒアリングを実施したが、自活支援事業を受託する多国籍企業であるインジウス社へのアウトソーシング状況に関する恩平区への調査は、成果がさほど上がっていないとの情報を得たため、本年度は調査を見送ることとした。また、国民基礎生活保障法の改正による単給化問題について、韓国保健社会研究院の主任研究員を日本に招情報を得ることができた 次に、「社会的企業」と「社会的協同組合」および地域自活センターについては、その要因調査をソウル市庁で行った。そして、社会的経済のシステムに関し、ソウル社会的企業開発センターを視察しヒアリングを行った。調査過程で明らかになった韓国版「生活困窮者自立支援事業」である希望ケアシステム(Hope Care System)について、新たな課題と位置づけ、南楊州市でヒアリング調査を行った。 さらには実態をより理解するため、主に若年層を対象としたフランスの公的扶助であるRSA(就業連帯所得)における就労支援と、「社会的企業」の関連性についてもヒアリングを行うことができたことは、生活困窮者への対応の多様性を確認できたと評価できる。 一方、日本国内においては、生活困窮者自立促進モデル事業の実施状況について、NPO法人やワーカーズコーポなどを視察調査した。しかし、フードバンク等の社会貢献事業を展開する団体へのアンケート調査に関しては、諸団体が調査を実施していることから、その調査結果の文献調査にとどまった。 なお、韓国内に新たな研究協力者を得ることができ、次年度以降の研究体制の重層化を図ることができたことから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本では、2015年度から「生活困窮者自立支援事業」の本格実施が始まるが、1.韓国においても2014年1月から韓国版生活困窮者自立支援事業といえる「希望ケアシステム」がモデル事業として始まった。日本と比較し、事業体の種類・数ともに圧倒的に多い自活事業を基礎とし、官民協働システムを採用していることからわが国の生活困窮者自立支援制度にも参考になるものと思われる。ついては、モデル都市である南楊州雇用福祉総合センターへ継続調査を行うこととする。次に、2.雇用労働部の所管である就労成功パッケージ事業のアウトソーシング状況について恩平区福祉事務所での追跡調査を行う。さらには、3.韓国の新しい経済体系である社会的企業や社会的協同組合の役割・機能等について実地調査を引き続き実施する。また、4.2013年に改正された国民基礎生活保障法のオーダーメード型(マッチョム型)個別給付が自活事業に及ぼす影響について動向を調査する。 日本においては、5.生活困窮者自立促進モデル事業(2013,2014年度)を実施した自治体のなかで、中間的就労を行った自治体に対して問題点と課題に係るヒアリング調査を実施するとともに、6.福祉事務所の就労支援専門員等への就労自立成功のみならず就労インセンティブ付与にするアンケート調査を実施する。 なお、本年度は、これまでの研究成果について、調査・研究の中間報告書の作成と進捗が遅れているホームページの立ち上げにより、その公表を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1名の研究者が、所属大学の組織改編作業に時間を取られ韓国調査等に参加できなかったこと、および中間報告書の作成が準備できなかったことにより、次年度使用額が発生したものである。 本年度は、就労支援に係る国内・韓国等の調査を頻回実施し、また韓国研究者を招聘して知見の提供を広く行う予定であり、研究費の適正な使用に今後とも留意したい。
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Research Products
(4 results)