2015 Fiscal Year Annual Research Report
社会貢献事業を基盤とした社会的就労による自立支援に関する研究
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24330172
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Research Institution | Yamanashi Prefectural University |
Principal Investigator |
下村 幸仁 山梨県立大学, 人間福祉学部, 教授 (20412942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高間 満 神戸学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30326475)
五石 敬路 大阪市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (30559810)
畑本 裕介 山梨県立大学, 人間福祉学部, 准教授 (50523544)
川村 岳人 健康科学大学, 健康科学部, 准教授 (30460405)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公的扶助 / 生活困窮者 / 自立支援 / 就労支援 / 機能分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,生活保護制度に該当しないか,もしくは生活保護申請の意思がない生活困窮者に対し,社会貢献事業を基盤とする社会的就労を通じた就労自立支援のあり方,特に就労自立の前段階としての社会的就労の場の有効性について実証することを目的として実施した. 本年度は,1)かつて「民主主義の実験室」と称されたアメリカ合衆国ウイスコンシン州ミルウォーキー市を訪問した.workfare政策の最前線であるWisconsin Works(W-2)の実際を唯一の非営利組織であるTANF窓口のUMOSにおいて,TANF委託の運営・財政面の実態やその影響についてヒアリングを実施した.また,シカゴ市では,シカゴ・ジョブセンターを訪問し,WIAから2014年に改正されたWIOA等についてシカゴ大学のEvelyn B.博士から知見を受けた.そして,シカゴ市のダウンタウンで移民等の生活困窮者が生活する地域で,若者に対する教育プログラムの開発により,就労支援を行っている支援団体を視察した.2)ベーシックインカム(以下,「BI」)導入に向けた社会実験を2017年度から開始するフィンランド調査では,雇用産業省の政策担当者たちからフィンランドの失業者や非正規雇用に関する動向や長期失業者に対する積極的労働政策について知見を得た.また,先進的に就労支援を行っているバンタ市のRAHOS「TYP」において,保健と雇用等のワンストップ型支援について知見を得た.また,KELAではBIの政策責任者であるOlli K.博士から,導入の背景と導入後の生活困窮者対策との関連について知見を得ることができた.また,フィンランドの社会的企業研究ネットワーク会長のPekka氏から社会的企業(SE)の4つのタイプについて説明を受け,社会連帯の必要性について知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,平成27年度で完了予定であったが,調査研究の韓国南楊州市における希望システムの実施機関である希望ケアセンター(Hope Care Center)の職員に対する個別ヒアリング調査を実施することができなかった.これは,日本における生活困窮者自立支援事業の運営に関する行政(福祉事務所)職員と社会福祉協議会やNPO法人職員との協働の可能性を検討する際の重要な位置を占めるものであったが,韓国内の感染症の発生により調査の時期を逸した. しかし,日本における生活保護の「改正」や生活困窮者自立支援事業の展開が進められるなか,就労支援に関する各種調査報告書による知見の確保は進めることができた.また,山梨県内の自立支援相談機関を対象にした実態調査も進めることができた.さらには,workfareが進行しているアメリカのTANFと実施機関であるW-2の調査,及びフィンランドのBIと導入後の生活困窮者対策に関してNPO法人等就労支援機関の実態と動向について調査を進めることができた.これにより,日本における民間支援団体がどのように就労支援の役割を担うべきかについての示唆を得ることができた. 研究の成果については,ホームページを開設したことで,成果の更新は遅れ気味であるものの活用を開始した. なお,日中韓の貧困に関する研究会において,報告をすることができた. やや遅れていると評価した理由は,以上のように韓国の調査に課題を残し,平成28年度へ繰り越したことによるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,これまで視察・調査した諸外国の公的扶助と就労支援に関する知見についてまとめるとともに,日本国内の生活困窮者自立支援事業における中間的就労の開発及び場の設定についての調査を行うこととする.また,韓国南楊州市の希望システムの実施機関である希望ケアセンター(Hope Care Center)の職員に対する個別ヒアリング調査を当初の予定通り実施し,調査結果をまとめ,日本の生活困窮者自立支援事業の実施体制との比較検討を行う. そして,5年間にわたる本研究の成果についてまとめ,報告書を作成する.また,学会等において本研究会メンバー各自が発表するとともに,ホームペーシ上で公表していきたい.さらには,研究成果について本の出版を検討する.
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Causes of Carryover |
平成27年度は6月から8月にかけて韓国南楊州市の4箇所にある希望ケアシステム事業所の職員へのヒアリング調査を予定していた.しかし,韓国において同5月から8月末にかけて感染症であるMERSコロナウイルスの拡大により訪韓しての調査をやむを得ず中止にせざるを得ない状況に陥った.これにより,本研究の中心の一つに位置づく日韓の生活困窮者自立支援制度の比較検討データを得ることができず,分析ができなくなったためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は,韓国南楊州市の希望ケアシステム事業所4箇所の職員へのヒアリング調査を行い,ヒアリング内容のまとめを行う.また,延期したため最終年度となることから,研究全体を通しての報告書の作成,及び報告会を実施することとしたい.
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Remarks |
2015年3月に研究会「社会的就労研究会」のホームページ「公的扶助と就労支援の連続性を保障するために」を開設した.データの更新を図りたい.
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Research Products
(13 results)