2014 Fiscal Year Annual Research Report
誘導色残像現象の総合的な検討 ―残像に皮質は関与するかー
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24330208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 隆夫 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60272449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四本 裕子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80580927)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 視覚 / 色覚 / 色残効 / 脳機能計測 / 誘発電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
色刺激に順応した後に、白紙を見ると順応色の補色に色づいた残像が知覚される(陰性色残像).この現象は,基本的には網膜レベル,錐体の順応による現象として理解されてきた.申請者は,陰性色残効に関して,最近,「輪郭効果」,「反対眼効果」と名付ける新しい現象を見いだした.前者はテスト時に順応領域を囲む輪郭を提示すると残像が強調される現象,後者は,単眼順応の後,反対眼に同様の輪郭を提示すると陽性残像が知覚される現象である.本年度は主として,残像の網膜座標系に対する依存性に関する検討を進めた.我々の視覚は網膜座標,世界座標,身体基準座標など,いくつかの座標系をもとに機能している.通常の色残効は,主として網膜レベルでの現象であると理解されている.もしそうであれば,網膜座標における位置を保ちつつ,他の座標系の位置を変化させたとしても残効の強度は不変であるはずである.そこで,順応時にそのような操作を行い,残像の持続時間の測定を行った.順応時の条件は4条件.単純な固視条件(全ての座標系で位置不変),眼球による追視条件(網膜座標は固定,他の座標では移動),頭部による固視(眼は固定し頭部運動で追視,網膜座標,頭部座標は固定,身体座標で移動),頭部移動(静止した順応刺激を固視したまま頭部を往復運動させる,頭部運動は視覚に関しては全く意味の無い運動となる).この4条件における残像の持続時間を比較したところ,固視条件に比べて,他の4条件全てで残像の持続時間が短くなった.このことは,単純な色残効が網膜レベルだけでは無く,より高次の脳に由来する座標系における位置情報の影響を示すものである.また,陽性残像においても同様な座標系の効果が生じるか否かについて,現在検討を進めている.生理的な指標を用いた検討に関しては,予備実験の段階に留まり,進捗が送れている.本年度は,この方向の検討も進める予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度,単純な色残効においても,網膜以外の座標系である世界座標系,身体座標系における運動が良く私的な効果をもたらすという結果が得られた.これは,これまで広く受け入れられている単純色残効は網膜レベルの現象であるという理解に反する事実である.そのため,この現象に関する検討に注力し,現在,陽性残像についての検討を進めている.そのため,それ以外の検討に進むことができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,座標系に関する検討を陽性残像を含めて進める.また,写真色残効に関しても同様の検討を進める予定である.その上で,生理的な反応の検討も行う予定である.
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Causes of Carryover |
一部研究計画の進行が遅れたため.それに関係する少額美品,消耗品の調達が遅れている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度未実施の研究計画,主として,2次輪郭に対する残効,写真刺激に対する残効,生理的指標を用いた検討に関する少額美品,消耗品の調達を行う予定である.
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Research Products
(5 results)