2015 Fiscal Year Annual Research Report
誘導色残像現象の総合的な検討 ―残像に皮質は関与するかー
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24330208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 隆夫 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (60272449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四本 裕子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80580927)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 視覚 / 色覚 / 視知覚 / 色残効 / 残像 |
Outline of Annual Research Achievements |
色刺激に順応した後に、白紙を見ると順応色の補色が知覚される(陰性色残像).この現象は,網膜レベルの現象として理解されてきた.我々は,陰性色残効に関して,最近,「輪郭効果」,「反対眼効果」と名付ける新しい現象を見いだした.前者はテスト時に順応領域を囲む輪郭を提示すると残像が強調される現象,後者は,単眼順応の後,反対眼に輪郭を提示すると陽性残像が知覚される現象である.この二現象は,誘導刺激の存在が必須であり,皮質レベルの貢献が想定される.本年は,この現象と視覚的な座標系の関係に関する検討を行い,新たな知見を得ることができた.視覚を支える座標系としては網膜座標系,世界座標系などいくつかの座標系が存在するが,色残像はこれまで網膜座標系に依存する現象であると考えられてきた.しかし,昨年度,我々は通常の,単純な色残効が網膜座標系のみによって決定されるのでは無く,身体座標系における運動からもその強度に対する変調が起こることを見いだした.その成果をうけた検討を行った結果,本年度,我々は,この点に関する詳細な実験的な検討を加え,色残効の輪郭による強調,ダイコプティックな陽性残像の強度,また写真色残像の強度が,網膜座標系のみに支えられる者では無く,身体座標系における運動からもその強度に対する変調が起こることを見いだすことができた.こうした結果は,色残像が単に網膜レベルの現象では無く,皮質レベルの影響を強く受ける現象であることを示している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
色残像は,従来,網膜レベルで説明可能な現象と考えられてきた.しかし,我々は,両眼入力が必須である陽性残効を見いだし,そうした考えの妥当性に疑問を持つに至った.そこで,本研究の提案では,この陽性残像現象を中心として皮質仮定の関与を問うことが骨子となっている.しかし,昨2014年度,この問題に,視覚的な座標系の関与という新しい切り口を見いだし,2015年度はその点に関する検討に注力した.2014年度には,通常の,単純な色残効が網膜座標系のみによって決定されるのでは無く,身体座標系における運動からもその強度に対する変調が起こることを見いだした.その成果をうけ,2015年度には,さらに詳細な心理実験による検討を加えた結果,色残効の輪郭による強調,ダイコプティックな陽性残像の強度,また写真色残像の強度が,網膜座標系のみに支えられるわけでは無く,身体座標系における運動からもその強度に対する変調が起こることを見いだすことができた.この結果は,昨夏,英国エジンバラで開催されたヨーロッパ視知覚会議で発表し,かなりの注目を集めた.こうした検討に注力した結果,当初の提案にあった生理的な指標を用いた検討に遅れが生じ,現在,生理実験にかんする予備的な検討を急ぎ進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年は,昨年度までに実施予定であった誘導性の残像に関する検討を進める.基本的な実験手法は同じ物であるので,特に問題無く遂行できと想定している.そのうえで,一昨年来進めている生理実験に関する予備的な検討を続行し,本実験へと移行していく. (1)装置の実装(眼球運動測定装置).(2)座標系実験用プログラムの作成.予備実験の実施. (3)心理実験の実施 残像選択,写真色残効の実験実施. 時間特性(誘導図形を遅延提示)・周波数成分の効果・通常の色残効との比較. 残像選択における,大きさ,方位選択性.(4)脳波,MRI 実験の実施(残像選択,写真色残効)心理実験で抽出した典型的な刺激(遅延時間,空間周波数成分)を用いる. (5)4種の誘導色残像現象に関する心理実験,脳波・fMRI 実験の結果を比較検討する.
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Causes of Carryover |
主として座標系に関する心理実験,その検討に注力した結果,当初の提案にあった生理的な指標を用いた検討に遅れが生じた.そのため,生理指標を用いる実験,時間遅延関係の実験実施に関する研究費に95万円の余剰が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高額の備品は不要である.物品費30万円,旅費30万円,人件費・謝金30万円,その他5万円を想定している.
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Research Products
(4 results)