2013 Fiscal Year Annual Research Report
話し合い活動を重視した道徳授業の根本原理となる批判的討議倫理学の理論的基礎研究
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24330248
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
上地 完治 琉球大学, 教育学部, 教授 (50304374)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 佳世 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (50454153)
澤田 稔 上智大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (00367690)
小林 大祐 慶應義塾大学, 付置研究所, 准教授 (50348819)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 道徳教育 / 討議倫理学 / ハーバーマス / 普遍化原則 / 脱慣習的段階 / 近代教育批判 / 善に対する正の優位 / 規範構造の組み替え |
Research Abstract |
1.ハーバーマスの討議倫理学の特徴を以下のようにまとめた。(1)討議倫理学が取り扱う規範は、真理性ではなく正当性に関することとして位置づけられる。そしてある規範が間主観的に承認されているという社会的事実と、それが承認すべきものであるということを区別しなければならない。(2)社会に通用している規範は、妥当性を付与された「道徳」と、特殊な集合体や個人の生活形態にむすびついた「価値」とに分かれる。(3)普遍化原則を前提した討議を通してある規範に妥当性を付与する。 また、こうした討議倫理学に対して次のような課題を指摘した。規範と価値を分離するハーバーマスの理論では、妥当性を付与された規範は再び価値の世界(日常の生活世界)へ送り返され、行為を支える根拠となるというが、その具体的なプロセスは示されていない。また、話し合い活動を通した規範が普遍的であるといえるためには、その答えが学級を超えても普遍的であるといえるということに合意したかどうかが重要となる。さらに、論議の規則として道徳原理を提示することは一つの道徳的選択ではないか、討議の学習機会はどのように保証できるか、といった課題があることが明らかとなった。 2.ハーバーマスの討議倫理学に関するわが国の先行研究を、(1)教育学の観点、(2)道徳(教育)の観点から整理した。教育学に対しては、啓蒙された者(大人・教師)がいまだ啓蒙されていない者(子ども・児童生徒)を正しく導くという近代教育の構造そのものに対する疑義と、近代的な教育概念の再構成の契機が示唆されている。また、道徳に対しては、善と正義との関係について討議倫理学は「善に対する正の優位」を明確に打ち立てることで、多数の善の乱立による混乱を解消しようとする立場を後押しする。そしてこうした討議が教室でおこなわれることで、それは学級という社会の規範構造を組み替える契機となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハーバーマスの討議倫理学の精査を2年目も継続しておこなった。この基礎理解を共有する作業は今後の研究の進展に不可欠で丁寧におこなう必要があったため、予定より研究会を2回多く開催して、討議倫理学について研究メンバーで集まって議論し、理解を深めた。また、日本における討議倫理学の受容がどのような課題・論点を日本の教育学(とりわけ教育哲学)と道徳教育理論にもたらしたかについて、整理することができた。 だが、討議倫理学の分析に時間をかけてしまったため、当初予定していた作業が次年度に持ち越されることになった。ホネットの道徳理論の観点からの批判的検討は次年度も継続して行い、コールバーグの道徳性発達論との比較検討は、最終年度に改めて取り組むこととした。 日本の道徳授業における「批判」の思想史的研究については、今年度取り組んでいるがまだ成果が報告できる段階までは整理されていないので、そのまとめを最終年度に持ち越すことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
第2研究年度の課題の積み残しにも対応しながら、最終年度として研究成果を取りまとめる方向で研究を進めていく。ホネットの道徳教育の観点からの批判的検討や、コールバーグの道徳性発達理論との比較検討、それにアメリカの批判的教育学の観点からの批判的検討とあわせて、討議倫理学の意義と課題を明らかにし、「批判的討議倫理学」として定式化していくことをめざす。 最終年度は研究成果の発表・公表にもさらに積極的に取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画が遅れてしまったため、予算執行が一部で計画通りにおこなえなかった。また、諸般の事情から、当初予定していた出張がおこなえなかった研究分担者もおり、そのため旅費の一部が次年度使用額のなかに計上されてしまった。さらには、セット本を購入するため、物品費のうちの10万円を次年度へ繰り越した。 研究の遅れを取り戻す中で、予算も適切に執行していく。『日本道徳教育論争史 第3期』(全5巻 約10万円)の購入に充てる。
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Research Products
(2 results)