2012 Fiscal Year Annual Research Report
学びのプロセスと日本語書記史を統合する学習材の開発と検証
Project/Area Number |
24330256
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
位藤 邦生 福山大学, 人間文化学部, 教授 (10069536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 正治 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (20219421)
牧戸 章 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (40190334)
磯貝 淳一 福山大学, 人間文化学部, 准教授 (40390257)
森 美智代 福山市立大学, 教育学部, 准教授 (00369779)
谷口 直隆 鈴峯女子短期大学, 言語文化情報学科, 講師 (90635947)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育学 / 国語教育 / 日本語学 / 学習材の開発 / カリキュラムの構築 / 日本語書記史 / 伝統的な言語文化教育 |
Research Abstract |
本研究は、伝統的な言語文化教育のための学習材の開発とカリキュラムの構築を目的とする。特に、学習者の「書けなさ」=「日本語特有の書記の難しさ」という観点の導入によって、現代の学習者の学びのプロセスと日本語書記史とを統合しようとする点が本研究の特色である。研究初年度に当たる本年度は、基礎的な段階として「書記史の解明」(日本語学・日本文学領域)と「学習者の実態分析」(国語教育学領域)2つの専門領域における研究を平行して進めた。 書記史の解明は、学習材の開発を視野に入れた上で、説話・物語文の『古事記』『竹取物語』、また日記・記録文である『後二條師通記』を対象に行った。『古事記』倭建命の人物造形に関わる表現の工夫、『竹取物語』における漢文的な表現構造、『後二條師通記』本記・別記の文体差に見る文章の再構成過程、等の言語事象が、現代の学習者にとって自身の「書けなさ」を自覚しうる日本語書記史上の観点となることを指摘した。 学習者の実態分析に関しては、先ずは競争や差別が自明化した現代社会に生きる学習者たちを想定し分析を進めた。また同時に次年度以降に実施する実験授業を視野に入れた授業の提案と実践分析を行った。従来「読むこと」(あるいは「理解」)の領域で取り組まれてきた文学的文章教材の授業を、語ること・物語ることといった「表現」(特に「書くこと」)の領域に位置づけることを試みる実践である。時系列に沿って出来事を記述していく作文とは対照的な、一定の視点から時間的な隔たりのある出来事と出来事とを結びつけ文脈化していく(新たな連鎖構造、あるいは構成を作り出す)という「物語り」の側面への注目が有効となることを指摘した。 以上に加えて、実験検証を行う授業づくりやカリキュラム作成に関わり、言語的コミュニケーションへの参加構造の分析、コミュニケーション教育のカリキュラムの検討等を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「書記史の解明」と「学習者の実態分析」の2つの領域を平行して進める本研究課題は、それぞれに次年度の研究を進展させるための基礎的な成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は日本語学日本文学領域・国語教育学領域それぞれの成果に基づき、統合的な成果を構築することを目指す。具体的には、学習者の内面に迫る学習材の開発、構築開発した学習材の有効性を検証するためのカリキュラム試案の作成を進める。今年度既に取り組みつつある実験授業の準備も継続して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学習者の「書けなさ」実態分析に関して、協力校との調整が予定通り進展しなかったことに関わり、調査の実施と分析に関わる経費に未使用額が発生している。次年度は研究計画に加えて本年度未着手となった調査分析を進めることとする。
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Research Products
(11 results)