2012 Fiscal Year Annual Research Report
幼小中高一貫した特別支援教育システム開発の実証的研究:私立学校を事例に
Project/Area Number |
24330260
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
高橋 智 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50183059)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / 幼小中高一貫 / 発達障害 / 私立学校 |
Research Abstract |
本研究では、私立中学校にも発達障害等の特別な配慮を要する生徒が在籍しているにもかかわらず、組織的に対応できていない問題状況が浮き彫りになった。私立学校の特別支援教育の体制整備について私立学校の体制整備の遅れを指摘した文部科学省「平成23年度特別支援教育体制整備状況調査」結果と比較すると、本研究の結果はそれ以上の遅れを示している。発達障害等生徒が入学した時点で実施可能な特別支援は、全日本中学校長会生徒指導部調査(2011)71.5%と同様に「学級担任の個別的な配慮で対応」137校85.1%が最多であった。私立・公立ともに中学校における発達障害等生徒の対応は学級担任によって支えられている。私立中学校における発達障害等生徒の困難・ニーズへの教職員の気づきは不十分で、生徒は適切な支援を受けられないまま学校生活を送っていると考えられる。 さらに、本研究で明らかになった発達障害等生徒の困難増大期は、思春期とも重なる時期である。思春期は「第二の誕生」とも言われ、心身ともに大きく変化するが、「中学校の生徒指導は行動面が注目されやすく、学習不振やもう少し丁寧な指導が必要な生徒への対応は遅れがちになってしまうのが実情である」との月森(2005)の指摘や「中学校段階では不登校・生徒指導・特別支援教育の対象となる生徒が重複していたり、顕在化している背景的要因への支援が複合的な視点から行われる必要がある」との寺尾・是永(2010)の見解をあわせて考えると、この時期の困難増大の背景にどのような問題があるのかに注目して、生徒のニーズを明らかにしていくことも必要である。 義務教育段階にある私立中学校では、公立学校と比較して特別支援教育体制整備が遅れている背景や促進における課題を踏まえて、私立学校のプライオリティや独自性を尊重しながら特別支援教育システムを構築していくことが不可欠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究に直接に関係する研究成果として審査論文3件、学会報告10件を発表し、その一部は、「私立、障害児支援に遅れ一個別指導1割にとどまる-経験や人手、公立と大差」『朝日新聞』朝刊、2012年6月14日付、「発達障害への対応遅れる私立-私立中学校の特別支援教育-高橋智東京学芸大教授ら実態調査」『内外教育』第6163号、pp.12-13、時事通信社、2012年5月15日付として報道された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通りに、(1)全国私立幼小中高の学校法人理事会対象の質問紙法調査を通して、私立学校に在籍する発達障害等の特別な配慮を要する生徒に対する同一学校法人内における一貫的支援の実施状況と課題について検討、(2)全国の私立学校協会対象の質問紙法調査を通して、私立学校の特別支援教育体制整備の課題について検討するが、本研究課題を国際的動向に位置付けて遂行していくために、就学前教育から高校卒業までの切れ目のない一貫した特別ニーズ教育システムの先進国である北欧諸国の教育実践の調査研究を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究課題を遂行するためには、とくに実態調査のための質問紙法郵送費、面接法調査交通費および調査補助・データ整理の謝金が必要となる。また北欧諸国の教育実践の調査研究の調査旅費が必要となる。なお研究成果は、日本特殊教育学会、日本特別ニーズ教育学会、日本発達障害学会などで口頭発表し、それにもとづき論文を、日本特殊教育学会誌『特殊教育学研究』、日本発達障害学会誌『発達障害研究』、日本特別ニーズ教育学会誌『SNEジャーナル』などに投稿するが、学会成果発表の旅費、論文投稿のための英文校閲費が必要となる。
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Research Products
(5 results)