2016 Fiscal Year Annual Research Report
スカラー曲率とアインシュタイン計量の幾何解析・大域幾何
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24340008
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
芥川 一雄 東京工業大学, 理学院, 教授 (80192920)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微分幾何 / 幾何解析 / スカラー曲率 / アインシュタイン計量 / 山辺不変量 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、edge-coneアインシュタイン計量と呼ばれる特異アインシュタイン計量を中心に研究を行った。具体的には次の2つの研究を行った。 1.edge-coneアインシュタイン計量族の具体例の構成とそれらの共形族における山辺の問題および山辺定数の研究 2.edge-coneアインシュタイン計量の滑らかなリーマン計量族による近似とその山辺不変量への応用の研究 1.に関しては、n次元球面 (n≧2) 上の edge-coneアインシュタイン計量族に関して、山辺の問題の可解性・非可解性に関して解答を与え、かつ山辺計量の解空間を特徴付けた。 2.に関しては、cone angleが2πより小さい edge-coneアインシュタイン計量 g に対し、滑らかなリーマン計量の族{g(i)}でそれらのリッチ曲率の下限と体積が g のリッチ曲率と体積に収束する、いわゆる良い性質を持つ滑らかな近似族{g(i)}を構成した。これにより、与えられた閉多様体 M上に edge-coneアインシュタイン計量 g が存在するとき、M の山辺不変量 Y(M) は特異計量である g の山辺定数 Y(M,[g]) を使って、Y(M)≧Y(M,[g])なる不等式で下から評価されることが導かれる。さらにこの場合、山辺定数Y(M,[g])の計算は、滑らかなアインシュタイン計量の場合と同様に計算可能である。 これらのことにより、山辺不変量の研究には特異アインシュタイン計量が有用であることが示せた。そのため、特異アインシュタインの計量の存在問題、特に特異計量を初期計量とするリッチフローの研究が今後の課題であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度に日本にて共同研究予定であった (リッチフロー・幾何解析の世界的研究者を含む) 海外研究者2名の直前の来日中止などにより、研究テーマの一つである「4次元リッチフローと山辺不変量の研究」を順調に進めることができなかった。リッチフローは依然急速に進んでいる分野で習得しなければならないことが多く、平成28年度は錐的特異点を持つ2次元リッチフローおよび simple edge計量を初期計量とするリッチフローに関する既存の結果の習得に終わり、このテー マで新たな研究結果を得ることができなかった。 またもう一つの研究テーマである「edge-coneアインシュタイン計量と山辺不変量の研究」に関して、予想以上に深い内容へと研究が進み、予定外の時間がかかったことも研究が遅れた理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に行ったedge-coneアインシュタイン計量に関する研究成果を欧文の論文としてまとめることができなかったので、平成29年度中には作成して海外の雑誌に投稿する予定である。 また、平成28年度に研究が遅れた「4次元リッチフローと山辺不変量の研究」に関しても、平成29年度に集中的に行う予定である。2次元では多くの研究成果が得られている錐的計量を初期計量とするリッチフローの研究を、3次元以上の特異計量 (特にsimple egde計量) を初期計量とするリッチフローへと対象を拡大し研究を行う。特に4次元多様体に関する特異リッチフロー・アインシュタイン計量・山辺不変量の研究が中心課題である。 その研究実施計画として、次が主要なものである。◆1.新たな共同研究者である特異リッチフローの専門家の Boris Vertman(ドイツ,ミュンスター大学) と研究連絡を行う。◆2.本研究課題と関係する内容を中心に、国内の若手研究者数名によるサーベイ講演の研究集会を 開催する。◆3.研究代表者はドイツおよびメキシコで開催される研究集会に出席・講演を行い、共同研究者や多くの海外研究者と活発な研究連絡を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度に日本に招聘予定であった海外研究者2名(アメリカ,イタリア)の直前の来日中止(先方の都合による)、および研究代表者の業務多忙(専攻長等)によるドイツ渡航予定の延期のため、日程の再調整を行い、平成29年度に研究代表者が海外へ出張し行うこととなった。このため、補助事業期間を1年延長する必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年8月中旬に約2週間、ドイツ・Oberwolfach研究所で開催される国際研究集会「Analysis, Geometry and Toplogy of Positive Scalar Curvature Metrics」、およびメキシコ・Oaxacaで開催される Pacific Rim Mathematical Congress のSpecial Session「Differential Geometry」に出席するための旅費として使用する。2つの研究集会でそれぞれ講演を行う。 さらに、昨年度招聘出来なかった研究者を含め海外の関連する研究者と山辺不変量・アインシュタイン計量・幾何解析の研究連絡を行う予定である。
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Research Products
(7 results)