2013 Fiscal Year Annual Research Report
流体方程式における自発的流れパターン形成 ―― 解の特異性と大規模流動現象
Project/Area Number |
24340016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 道夫 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90166736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹広 真一 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (30274426)
岡本 久 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40143359)
林 祥介 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20180979)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 応用数学 / 流体 |
Research Abstract |
これまでに,β面上の2次元非発散流体系について,波動解の非線形相互作用によるジェット流形成過程を記述する理論的枠組みを整備した.この系は波動乱流系であり,弱非線形近似が比較的良い精度で成り立つ特徴があるため,低次の非線形性を考慮することによってジェット流形成過程をよく再現できることが期待される. そこで,低次の非線形性を基にした枠組みによる定式化をβ面のCHM 方程式系において実行し,積分された擬運動量方程式に,流れの安定性の一般固有値問題の連続固有値に属する固有関数の遠方における漸近形を用いることで,線形波の反射係数とジェット流加速の関係式を導いた.今年度は以上の理論的準備のもとにCHM方程式の時間発展の高精度数値計算スキームを作成し,線形波動が「波と平均流の相互作用」を通じて大規模流れパターンを形成する過程について数値計算を実行した.その結果,ロスビー波による波束型攪乱がシア流域に入射する際,波と平均流が臨界層を通じて相互作用することによって,波から平均流へと運動量が輸送される過程を再現することに成功した. 一方,上述の関係式は平面波の反射率と透過率を基本情報としてシア流の生成率を与えるものであり,準単色波である波束への適用が必ずしも良い近似とは限らない可能性がある.これは,要素平面波の波数による臨界層の位置や運動量輸送率の相違によって,波束の反射と透過の記述に誤差を生じる恐れがあるためである.実際,準単色波の反射率と搬送波の反射率には差が見られたため,あらためて波束の反射から求めなおした反射率を用いることによって,数値実験結果と上述の理論式の間に良い一致が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,地球科学や宇宙科学の領域で見られるジェット流の自発的形成について,それらがしばしば乱流解からの自発的な流れパターン形成として現れることに着目して,波動乱流中のジェット形成の基本過程の研究を目的としている.この過程を記述するための基本的枠組みとして,ジェット流(帯状流)のある場における波が,主流である帯状流のもとで現れる臨界層を通じて運動量を輸送する機構をとりあげ,その定量的記述を与えることを目指している.この機構は,定性的には流れの安定性理論の中で攪乱方程式の特異点問題として扱われ,運動量フラックスが特異点前後において変化することから,運動量が波から流れに輸送されると解釈されている.この過程の定量的記述の枠組みは本研究で初めて扱うもので,安定性固有値問題の点スペクトルだけでなく,連続スペクトルに伴う固有関数の遠方における漸近形から得られる波動の反射係数と透過係数を用いて運動量輸送量を与えることを企図している.本研究ではこれまでに,このような理論的枠組みを準線形理論を用いて構成し,帯状流の運動量変化量と入射波束の特性を関係づける式の導出に成功した.またその解析結果に引き続き,このような現象過程を数値的に追跡・再現するための数値コードを作成した.このコードを用いた数値実験結果は,準線形の枠組みの中で,上述の理論結果を良く再現し,理論と数値実験結果の一致が得られた.これは本研究計画の中の重要な結果であり,計画に沿った順調な進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまでに,低次の非線形性を基にした枠組みによる定式化をβ面のCHM 方程式系において実行し,併せてCHM方程式の時間発展の高精度数値計算スキームを作成し,理論結果と数値結果を比較し理論の妥当性を検証した.その結果,理論面では,擬運動量方程式の積分形方程式に,流れの安定性の一般固有値問題の連続固有値に属する固有関数の遠方における漸近形を用いることで,線形波の反射係数とジェット流加速の関係式を導いた.また数値的には,ジェット流形成の基礎過程を追跡・再現するための数値コードを作成し,これを用いて波動がジェット流域に入射することにより波動の臨界層を通じてジェット流に輸送される運動量を定量的に評価した.この結果は,上述の理論式から導かれる結果と良い一致を示し,本研究によって,準線形の枠組みにおけるジェット流加速機構の定量的記述の基礎的結果を得ることに成功した.今後の研究の推進においては,この準線形の枠組みが,波動とジェット流の強い非線形相互作用のもとでの加速機構をどの程度記述するのかを明らかにすることを目的とする.これを実行するために,入射波束とジェット流の相互作用実験を,より広いパラメータレンジで試みることで,準線形理論の示す結果の非線形加速一般の記述への有効性を調べる.入射波束の振幅が増大するとき,準線形的に得られている理論結果がどの程度非線形領域にまで妥当するか,という点を明らかにすることが今後の研究の目標である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,当初,国際研究集会を開催するための予算を見込んでいたが,その後,年度途中になって,当研究集会に対して他の財源からの相当額の補助が得られることとなった.そのため,当初予定していた国際研究集会関係の本科学研究費(基金分)を,次年度以降の研究に使用することとした. 本研究計画はこれまで順調に進展しており,特に理論的枠組みの整備は望ましい展開となっている.今後,これらの結果を地球科学および数学の関連分野の専門家と議論し,また最新の状況も併せて把握するため,海外から専門家を招聘してのワークショップの開催を考えており,このための予算使用を計画している.
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Full sphere hydrodynamics and dynamo benchmarks2014
Author(s)
P.Marti, N.Schaeffer, R.Hollerbach, D.Cebron, C.Nore, F.Luddens, J.-L.Guermond, J.Aubert, S.Takehiro, Y.Sasaki, Y.-Y.Hayashi, R.Simitev, F.Busse, S.Vantieghem, A.Jackson
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Journal Title
Geophysical Journal International
Volume: 197
Pages: 119-134
DOI
Peer Reviewed
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