2014 Fiscal Year Annual Research Report
流体方程式における自発的流れパターン形成 ―― 解の特異性と大規模流動現象
Project/Area Number |
24340016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 道夫 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90166736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 祥介 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20180979)
竹広 真一 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (30274426)
岡本 久 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40143359)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 応用数学 / 流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,β面上の2次元非発散流体系について,波動解の非線形相互作用によるジェット流形成過程を扱っている.この系は線形波動解が存在する系であり,弱非線形近似が比較的良い精度で成り立ちジェット流形成過程をよく再現できると期待される.
本研究ではまず,β面のCHM 方程式系において波動と流れの相互作用を研究した.波動の擬運動量方程式は,擬運動量とジェット流の低次相互作用を記述するが,このためには波動についての詳細なデータが必要であり,概念的記述には役立つもののジェット流の加速・形成現象の実際的な定量的評価に用いるのは不適当である.そこで本研究ではこの擬運動量方程式を時間と空間に関して積分した方程式を用いた.この方程式の利点は,波動解については遠方場の情報のみによって,ジェット流の最終加速量を与えることである.ここでさらに,波動解の遠方場は,ジェット流の安定性固有値問題の連続固有値の固有関数の構造,特に反射係数と透過係数によって与えられることに注意すると,ジェット加速量を固有値問題の解の構造と関係づけることができる.通常安定性問題において重要な不安定固有関数は遠方で指数的に減衰するため,本研究において重要なのは,中立固有関数の遠方の構造となる.
以上の理論的結果に基づき,本研究では波動によるジェット流加速の数値計算を実行し,理論と数値結果の比較を行った.定量的結果は,入射波束の構成にかなり敏感に依存することを示しており,理論結果と数値結果の比較は注意を要するため,本年度は前年度に引き続いて反射係数などの評価法について検討し小振幅の波動に対しては数値実験結果と理論結果の間に概ね良い一致を得た.非線形性の増加する場合の評価についての研究は進行中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,地球科学や宇宙科学の領域で見られるジェット流の自発的形成について,波動乱流中のジェット形成の基本過程の研究を目的としている.この過程は,定性的には流れの安定性理論の中で攪乱方程式の特異点問題として扱われ,運動量フラックスが特異点前後において変化することから,運動量が波から流れに輸送される過程と考えられる.このような過程の定量的記述は本研究で初めて扱うもので,安定性固有値問題の連続スペクトルに伴う固有関数の遠方の漸近形,特に波動の反射係数と透過係数を用いて運動量輸送量を与えることを企図している.本研究では,理論的枠組みとして擬運動量方程式の積分によって,ジェット流加速と入射波束を関係づける式の導出に成功し,その結果を数値解析によって検証している.これまでに小振幅波動の場合について,数値結果が理論的予測と概ね良い一致を示すことを確認している.現在さらに強い非線形性を伴う場合に向けて研究を進めており,これらは本計画に沿った順調な進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではβ面のCHM 方程式系において,波動によるジェット流加速の機構を,擬運動量方程式の積分を用いて,流れの安定性の一般固有値問題の連続固有値に属する固有関数の遠方の漸近形に帰着させ,波動の反射係数などとジェット流加速の関係式を導いた.またこの結果を数値解析を用いて検証し,入射波束が臨界層を通じて運動量をジェット流に輸送する過程を定量的に評価した.数値結果は理論結果と概ね良い一致を示し,準線形の枠組みにおけるジェット流加速機構の定量的記述の基礎的結果を得ることに成功している.今後の研究の方向は,この方法による波動とジェット流の相互作用の記述が,非線形性を増すときにどの程度有効かを調べることにある.現在このための数値実験を行っているが,引き続き,この数値実験を発展させ,より広いパラメータレンジでのジェット流加速現象の記述の可能性を調べる方針である.
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Causes of Carryover |
フランスなどから専門家を招いて本研究の研究成果に関する議論と研究連絡を行うことを計画していたが,所属機関の予算からの支出が可能であったためそちらから支出した.また海外における研究発表を行うための旅費を計画していたが,これも同様の支出を行った.これらの理由などから次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に引き続き,フランスなどから専門家を招いて研究成果に関する議論と今後の研究計画に関する意見を求める予定である.また海外における研究発表のための旅費,および,大型計算機センターにおける計算機使用料などに予算を使用する予定である.
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Research Products
(8 results)