2014 Fiscal Year Annual Research Report
高次元局在パターンの運動を解析するための理論の構築
Project/Area Number |
24340019
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
栄 伸一郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30201362)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 反応拡散系 / 局在解 / 樟脳片 / 相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
水面に浮かべた樟脳片の運動をパルスダイナミクスの観点から考察した.パルスの運動を解析するためには, 元となるパルス状局在解の存在のみならず, その線形化作用素のスペクトル分布や共役作用素の固有関数の情報などが必要となるが, そうした情報を得ることは一般には甚だ困難であり, 多くの場合, 特異摂動法を用いるなど, 特殊なパラメータ領域で近似解を構成するといった方法をとっていた.一方で, 樟脳片の運動を記述したモデル方程式においては, 上記の必要情報を余すことなく具体的に得ることができるという 利点がある.今年度はまず樟脳片の数理モデルから必要情報をすべて抜き出すことからはじめ, 手始めとして楕円樟脳片の運動を解析した.楕円樟脳片とは文字通り樟脳片の形状が楕円形をしている場合であり, 非球対称なパルス状局在解に対応する.抜き出した必要情報を元に単独の楕円樟脳片の漸近安定性を示すことに成功すると同時に, そうした安定な楕円樟脳片が複数ある場合の相互作用も解析することができた.安定な非球対称パルス状定常局在解の存在例は, 反応拡散系においてはこれまで数値計算のレベルでも知られておらず, 今回の研究が初めての結果となる.樟脳片が複数ある場合の相互作用に関しては, その運動方程式を具体的に書く下すことにも成功し, 多くの場合, 2つの楕円樟脳片を結ぶ中心線に対して, 長軸が垂直になることを理論的に示すことができた.樟脳片は実験も容易なことから, 今後. 理論の実験との比較検証を行い, 業績論文としてまとめる予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
樟脳片における非球対称定常局在解に関しては当初, 楕円形状の場合のみ具体的計算ができることを期待していたが, 予想に反して, 任意形状で必要情報を抜き出すことに成功した.これにより, 楕円形状に限定する必要がなくなり, かなり一般的な議論が可能となった.またそれにより, 実験との比較がより容易になった点は大きな進展といえる.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要の項目でも記したように, まずは理論で予想された結果を実験と比較検証することを始める.その後は当面, 理論を深める方向, たとえば得られた必要情報を用いることによる分岐構造の決定や, 樟脳片形状に依存した進行方向の選択性など, これまで数値計算のみでしか確認されていなかった事実に理論的基盤をしっかり与え, より一般の反応拡散系へ拡張するための足がかりを築いていく予定である.
|
Causes of Carryover |
物品購入による端数を繰り越した.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品購入に充てる予定である.
|
Research Products
(8 results)