2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24340035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須藤 靖 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樽家 篤史 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (40334239)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 系外惑星 / トランジット時刻変動 / 惑星食 / 多重惑星系 / 潮汐相互作用 |
Research Abstract |
ケプラー宇宙望遠鏡が発見した4重惑星系KOI-94と3重惑星系Kepler-51のトランジット時刻変動解析を行った。それらの惑星候補7つは、3日から100日程度の、太陽系内惑星に比べると極めて短い公転周期を持つ。さらにKOI-94は、昨年度我々が惑星同士の食を発見したユニークな系である。今回の研究結果は、ケプラーチームに正式に認定され、KOI-94は惑星候補から 惑星系Kepler-89と命名されることになった。その重要な点は以下の通り。 [1] KOI-94の最大の惑星の質量は独立な分光観測から得られた値の半分程度となった。その原因は未だ不明だが、従来の質量決定法の系統誤差の可能性を示唆する重要な結果であると考えている。 [2] Kepler-51の3つの惑星全てが、これまで発見された惑星の中で最も低密度(地球の1/100以下)であることを発見した。このような低密度惑星は、現在の惑星形成理論では予想されておらず、標準モデルの何らかの変更を迫る重要な観測的制限である。 [3] KOI-94の3惑星もまた平均に比べてかなり低密度であり、今回の発見は単なる例外ではなく、多重惑星系が示すある種の普遍的な特徴である可能性がある。多重惑星系の形成と進化はまだ十分理解が進んでおらず、それらの新たな進化経路を示唆する観測的証拠なのかもしれない。 さらに、主星と惑星との間の潮汐相互作用をとりいれた角運動量の進化を計算する数値コードを開発し、惑星が主星の自転軸に対して、平行、直交、反平行の公転軸を持つ状態が準平衡状態として達成されるものの、最終的には安定な平行な向きに揃うことを示した。この結果は、観測的な自転軸と公転軸のなす角度の分布とは矛盾しており、標準的な潮汐相互作用モデルに重大な欠陥があることを示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的は、1)主星の自転軸と惑星公転軸のなす3次元角度の推定、 2)惑星系の角運動量ベクトルの進化、 3)トランジット惑星のリングと衛星の測光分光学的検出法の提案、 4)反射光の精密測光による惑星表面地図の推定の4つであった。 4)に関しては、すでに初年度に精力的に研究を行い、成果をあげている。今年度は、1)と2)を中心とした研究を行い、順調な成果をあげるとともに、今後の研究につながるいくつかの興味深い結果を得ることが出来た。3)についてはまだ手が付けられていないが、今後の時間の余裕を考えながら、着手していきたいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
主星の自転軸と惑星公転軸のなす3次元角度の推定に関しては、星震学の専門家との共同研究を開始することができ、従来は困難であったこの3次元角度の推定が大きく進展しそうである。特に現在は、HAT-P-7とKepler-25と呼ばれる2つの惑星系に関して、星震学から得られる主星の自転軸の傾きと、トランジット惑星の光度曲線から得られる軌道パラメータを組み合わせた解析を実行中である。これによって、星震学を用いた主星の自転軸と惑星公転軸のなす3次元角度の決定という方法論を確立できるものと期待している。 また、惑星系の角運動量ベクトルの進化に関しては、T Tauri段階の興味ある惑星系を選び、その潮汐相互作用の違いが、いかなる観測的帰結を及ぼすかを定量的に計算しつつある。モデルによっては今後数年以内のデータですら大きな違いを生み出す可能性があり、観測計画の策定にとっても興味深い。
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