2013 Fiscal Year Annual Research Report
高精度偏光観測で初めてえられる、量子論的ハンレ効果を用いた太陽彩層磁場構造の研究
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24340040
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
鹿野 良平 国立天文台, SOLAR-C準備室, 助教 (70321586)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 雅仁 国立天文台, ひので科学プロジェクト, 助教 (80425777)
勝川 行雄 国立天文台, ひので科学プロジェクト, 助教 (00399289)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 太陽物理 / 国際協力 / ロケット / プラズマ・核融合 / ハンレ効果 |
Research Abstract |
本年度は、CLASP偏光分光装置のなかで最も重要な偏光モジュレーション装置(PMU)の開発を行い、フライト品を完成させることができた。PMU開発のポイントは、1.ライマンα波長(121.57nm)で遅延量180度を持つ波長板の開発、2.波長板を一定回転させる回転モータ駆動装置の開発、3.波長板遅延軸のモータ回転角基準への正確(<0.15度)な設置である。CLASPの波長板は、厚さの微妙に異なる2枚のMgF2結晶の板を、遅延軸を直交させて貼り合せて作られる。ここで遅延量を決めるのは、MgF2の複屈折度と2枚の板厚差である。別途行ってきた基礎実験によりライマンα波長でのMgF2の複屈折度が ne-no = 0.004189±0.000039 と判明していることから、今回、CLASPに必要な遅延量180度を得るために板厚差14.51μmの波長板を製作し、分子科学研究所・極端紫外光研究施設(UVSOR)の放射光を使用してライマンα波長での遅延量を測定した。結果、正確に遅延量180度の波長板が完成した。CLASP観測装置では、この波長板を観測光路中で一定速度で回転させることにより、観測光に含まれる直線偏光成分を強度変化に変換し、その強度変化をモータと同期して計測することにより偏光度と偏光方向を求める。CLASP観測装置に要求される0.1%の偏光測光精度を実現するには高い回転一様性が求められるが、今回、高安定度の回転モータ駆動装置を開発し、可視光用1/2波長板を実際に回転させて偏光変調による強度変動を計測した。まず、各瞬間の強度は一定回転での強度変動から3%以下の違いであることが確認でき、さらにCLASPでの計測モードを模擬してで疑似偏光を評価すると、0.006%(RMS値)と要求に対して十分小さいことが検証できた。最後に、項目1のライマンα用1/2波長板を項目2の回転モータに設置した。UVSOR放射光からのライマンα波長の光を直線偏光化して計測し、波長板遅延軸がモータ回転角基準から0.07度以内に設置できたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年10月に発生した米国予算(NASA予算を含む)の執行停止に伴い、米国側共同研究者の開発・検討作業が一時停止したことにより、年度当初に比べて装置開発は数か月遅れとなっているのは事実であるが、今後の開発スケジュールには必要な余裕が含まれていることもあって、平成27年の観測実施には問題ないため。 また、ハンレ効果によるライマンα線偏光線輪郭モデルの構築については、(1)彩層・遷移層中での輻射場の異方性の導出、(2)輻射場の異方性がつくる原子偏向とライマンαに現れる偏光度の算出、(3)彩層・遷移層磁場による原子偏向の変化とライマンα偏光度の変化の算出、という3つに分けたとき、連携研究者・後藤氏の検討により後者2つの振舞いを示す簡易モデルができつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
CLASP観測装置開発としては、平成25年度までに、装置を構成するフライト光学素子やフライトユニットがほぼ完成してきたことを受けて、平成26年度は本研究にて、偏光分光装置の組立て・光学性能試験・偏光特性試験を実施して完成させる。 ライマンα線偏光線輪郭モデルの構築については、特に、彩層・遷移層中での輻射場の異方性の導出について着目し、複数の太陽大気モデルによる違いと、それによるライマンα輝線のハンレ効果の出現の違いを明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はNASA観測ロケットを使用した観測実験計画であるため、観測装置の基礎開発・基礎検討からフライト品開発への移行は、NASAによるロケット使用許可を得てから行うことにしていた。この使用許可が、通例からみて2012年9月初頭には判明するところが、2012年11月末まで遅れた。また、2013年10月に発生した米国予算(NASA予算を含む)の執行停止に伴い、米国側共同研究者の開発・検討作業が一時停止した。以上の2点により、全体として半年程度後ろに平行移動して計画が進んでいるため。 当初予定では、平成25年度後期に実施する予定であった、偏光分光装置の組立てと機能性の確認試験を平成26年度に実施し、最終的にはCLASP観測装置を平成26年度に完成させる。
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Research Products
(14 results)