2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24340047
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
久野 純治 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60300670)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 暗黒物質 / テラスケール / 素粒子模型 |
Research Abstract |
① 電弱相互作用をするような暗黒物質と原子核との散乱はパートンレベルでは電弱ゲージボゾンのループ過程によって生じる。我々は散乱断面積をQCD結合定数による摂動のリーディングで評価を行った一方で、偶発的なダイアグラム間の相殺により予言の不定性が大きく、信頼できる予言を得るには高次補正を評価する必要がある。我々は、軽いクォークの寄与に関する高次補正の評価を行い、その寄与が優位であることをみた。現在その結果を論文で発表すべくまとめている。 ② 暗黒物質対消滅起源の線ガンマ線は宇宙線観測による暗黒物質探索において暗黒物質の存在の決定的証拠となると考えられている。TeVスケールを超える質量をもつ電弱相互作用をするような暗黒物質が対消滅する場合、電弱相互作用による非摂動効果によりその断面積が大きくなることを我々は以前示した。その一方、その予言が電弱相互作用による高次補正によりO(1)の不定性があることが指摘されている。この評価は数値的に行われており、大きな高次補正の起源が明らかではなく、その信頼性が疑っている。我々は高次補正の解析的評価を現在押し進めており、もう間もなく確定的な結論が得られるまでにきている。 ③ 電弱相互作用をするような暗黒物質の有効理論を導いた。これにより様々な現象論的な研究が、元々の理論によらずに可能となる。特にヒッグス場との結合を通して電子の電気双極子能率を予言し、実験からくる現在の電子の電気双極子能率の上限はこの模型を強く制限することを示した。 ④ 暗黒物質を含むテラスケールの物理の現象論的研究を行った。特に10~100TeV程度の質量をもつスクォーク、スレプトンをもつ超対称模型は、ヒッグス粒子の質量、暗黒物質の観点から注目されており、その理論における電気双極子能率、陽子崩壊を議論した。これらの結果は査読付雑誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LHCで新物理が発見されていない現在の状況において、暗黒物質の熱的残存仮説の検証の重要性は大きくなっていると言える。電弱相互作用をするような暗黒物質は、宇宙初期生成された熱的残存量からテラスケールにその質量が期待される一方、質量がTeVを超えることからLHCによる直接生成は困難であり、暗黒物質の直接探索、宇宙線観測による間接探索、素粒子精密測定からの制限によりその兆候を探る必要がある。 現在、電弱相互作用をするような暗黒物質の中で、超対称標準模型におけるウィノに代表されるようなSU(2)3重項粒子が暗黒物質である場合に着目し、その直接探索および線ガンマ線へのつい消滅過程を用いた間接探索に対する量子補正の計算を進めている。これらの評価を行うことでより信頼性の高い予言を行うことは非常に重要である。現在これらの計算は次年度頭には完了する見込みがたっている。また、これらの計算はほかの電弱相互作用をするような暗黒物質への拡張が可能であり、それらは現在の計算が完了後に進めるため、次年度中にはできると考える。 また、電弱相互作用をするような暗黒物質の有効理論の構築により、より模型によらない形で暗黒物質の理論を制限をすることが可能であり、それによりLHCでの暗黒物質探索に対してどのようなシグナルが期待できるかが議論をすることができる。たとえば、電弱相互作用をするような暗黒物質は、電荷を持つような粒子をアイソスピンのパートナーとして持つことから、そのLHCの探索が可能である。 以上の観点から本研究課題はおおむね順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
① 超対称標準模型におけるウィノに代表されるようなSU(2)3重項粒子が暗黒物質である場合に着目し、その原子核との弾性散乱断面積に対するQCDのnext-leading orderの評価を完成する。そこで得られた技術をもとに、ほかの電弱相互作用をする暗黒物質や、それ以外の暗黒物質の原子核との弾性散乱断面積の信頼できる評価を提示する。 ② 超対称標準模型におけるウィノに代表されるようなSU(2)3重項粒子が暗黒物質である場合に着目し、線ガンマ線への対消滅断面積への電弱相互作用のnext-leading orderの評価を行う。そこで得られた結果を元に、陽電子や反陽子への対消滅断面積に対しても同様の評価を行う。また宇宙初期の熱的残存量を同精度で評価を行うことも本研究課題中に時間的に可能であれば、それも行う。 ③ 電弱相互作用をするような暗黒物質の有効理論をLHC実験でどのように検証可能かを議論する。
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Research Products
(7 results)