2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24340052
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉見 彰洋 岡山大学, 極限量子研究コア, 准教授 (40333314)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 原子磁力計 / 非線形磁気光学効果 / 電気双極子モーメント / 核スピンメーザー |
Research Abstract |
今年度はこれまで整備した実験セットアップを用いて Rb 原子の非線形磁気光学回転(NMOR)信号の特性を研究し、磁力計感度に重要なパラメータであるNMOR信号の線幅に関する知見を得ることを重視した。NMOR型磁力計の磁場感度が NMOR スペクトルの幅と直結するにもかかわらず、スペクトル幅は複数の要因から生まれることから、その要因の構成要素を定量的に評価し、それぞれについて改善を施すことが重要である。測定原理はRb原子を蒸気圧密度で含んだガラスセルにパラフィンコートしたものを用意し、そのセルにD1 吸収波長の狭線幅半導体レーザーを照射して偏光面の回転の測定を行うものである。レーザーの周波数安定度がまだ最適化されていないため信号のS/N はまだ良くはないが、NMOR スペクトルを観測できるに至った。得られたNMORスペクトル幅からRb原子のスピンコヒーレンス時間(T2)は 3.6 ms と見積もられた。またこのコヒーレンス時間を決めている要因について考察するために、スピン縦緩和時間(T1)の測定を独立に行い 10 ms であることを確認した。これは Rb 原子がセル内壁に平均100回衝突する時間スケールに相当し、コーティングによる壁衝突緩和抑制の効果が十分ではないが確認できた。またこの結果から T1 と T2 は同じオーダーではあるが、T2 が若干短いことが分かる。このことから壁衝突以外のデコヒーレンスの寄与、例えば磁気シールド内の残留磁場によるものが効いていることが分かり、改善の道筋がはっきりした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的な測定セットアップ及び測定データが取得できる状態に至ったので。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は磁気シールドの改善を通じて、スピンコヒーレンス時間を短く抑制している残留磁場の抑制等を行いNMORスペクトル幅の改善を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であった磁気シールド・光学系の類似品を試験的に使用できる機会が生じ、実績を積んで後に次年度購入することとした。 本年度の研究結果によって改善するべき点が磁気シールド・光学系等においてはっきりしたため、その結果を踏まえて、次年度に装置を追加整備する予算執行に充てることとする。
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