2014 Fiscal Year Annual Research Report
π+π-原子散乱長測定によるQCD検証-発展DIRACラムシフト測定実験ー
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24340058
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
岡田 憲志 京都産業大学, コンピュータ理工学部, 教授 (90093385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩下 芳久 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00144387)
千葉 雅美 首都大学東京, 理工学研究科, 研究員 (60128577)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ππ散乱長 / 二中間子原子寿命 / QCD / カイラル摂動計算 / ラムシフト / DIRAC実験 / 準安定P状態 / シュタルク効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
ππ散乱の散乱長の低エネルギーでの実験的測定は、QCDの色閉じ込め領域での良い検証となる。π+π-原子(Aππ)の基底S状態の崩壊寿命測定は 散乱長差|a0-a2|(添字isospin)を与える。この値は我々の実験で4%の精度で求められた。今回の目的であるAππの準安定PとS状態間のラムシフトΔE∝(2a0+a2)測定と合わせて、a0 とa2を分離して求めることができる。 Aππの基底状態の散乱長と準安定状態の存在を測定したPSからのスペクトロメータ撤去を完了し、CERN加速器の停止している2014年はSPSでの実験準備を始めた。第一に、計数率増強と細分化を行った新dE/dxホドスコープ(IH)のスラブ毎の性能は、京産大に構築したフル装備のF1回路DAQと宇宙線を使って測定を始めた。F1-ADCの原点の問題点を解決してMIPSに対する発光光量とPSPM上での光電子数測定を継続して2015年度半ばまで続ける。 Aππの準安定P状態の存在観測のために標的近傍に挿入した永久磁石が粒子放射線のため大幅に減磁した。放射線耐性の大きな磁石に関する研究を原子炉中性子で計画していたが、原子炉の再開問題が研究用の原子炉にまで及んだために京大熊取の原子炉は2014年度全く稼働せず実現できなかった。この間、磁場強度を遠隔で計測する振動型センサーを開発し実用化した。2013年データからNd系の磁石で減磁が大きくSm-Co系では小さいことが判ったので、Sm-Co系の素材を中心に中性子照射実験を行う。 論文作製については、ππと同時にデータを得ているπK原子の生成観測と初の寿命測定の結果をまとめ、Physics Letters B 735 (2014) 288.に発表した。また、改良したDIRACスペクトロメータの論文は最終ドラフトまで進行しており、2015年度はじめにNIMに投稿予定である。 SPSでの実験のためのLetterr of IntentはDIRAC実験代表者を中心に最終段階に有り2015年10月に提出するため、検出器の改良と種々のシミュレーションなどを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
100μmBe標的で生成されたS状態のAππはπ0π0に崩壊するか標的内でπ+π-に解離する。Beと10cm下流の2μmPtとの間に設置した磁石で荷電粒子は排除され、Ptに入射するのはBe内でSからP準安定状態に励起されたAππのみとなる。この手法を使い、PtでP状態Aππをπ+π-に解離し現状のスペクトロメータでP状態の収量を測定できた。この結果とシミュレーションより、450GeV陽子のSPSで1年間のビームタイムがあればラムシフト測定から4%の精度で散乱長を求められる見通しができた。 シュタルク効果を利用するため強い磁場を発生する永久磁石の減磁の問題があるが、放射線耐性の大きい磁石の候補はほぼ確定しており熊取またはDubnaで照射線量対減磁曲線を測定するだけとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
CERN-SPSでの450GeV陽子によるππ原子のラムシフト測定を実現すべくLetter of Intentを2015年10月に提出する。コースが決まればそれに合致したスペクトロメータの設置設計図の作成とそれに伴う一部架台の改造を行う。 永久磁石の設計製作を進め、詳細な磁場測定を行うことで、ラムシフト測定のシミュレーションの精度を上げる。 考えられるビームの時間と空間構造を最適化し、標的上流、標的近傍でのバックグラウンド源の把握と対策を行い、特に日本グループの開発した上流側検出器であるSciFi-Hodoscope とdE/dx-Hodoscopeのパフォーマンスを向上させる。
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Causes of Carryover |
京大熊取原子炉の停止により中性子照射実験が行えなかったため、実験費用と旅費が未使用となった。 CERNでのコラボレーション間の共通作業が少なかったためコモンファンドの減額による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
LoI提出のためCERNでの会合と国内での打ち合わせが多くなると予想され、旅費に使用する。中性子照射実験が再開されれば、測定費用と旅費に使用する。 研究最終年度のため、多くの論文を発表する費用に使用する。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] First πK atom lifetime and πK scattering length measurements,2014
Author(s)
DIRAC Collaboration, (B. Adeva, S.Aogaki, M.Chiba, Y.Iwashita, V.Karpukhin, M.Kobayashi, L.Nemenov, K.Okada, F.Takeutchi, 69peoples)
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Journal Title
Physics Letters B
Volume: 735
Pages: 288-294
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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