2013 Fiscal Year Annual Research Report
マルチフェロイック物質の強誘電相における原子核密度と電子密度の可視化
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24340064
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木村 宏之 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (50312658)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 磁気誘起強誘電性 / 精密構造解析 / 中性子・放射光 / 強誘電変位 |
Research Abstract |
白金るつぼを用いたフラックス法により,マルチフェロイック物質154SmMn2O5の単結晶育成を前年度に引き続き行った,準備実験としてSmMn2O5の単結晶育成の最適化条件の探索をこれまで行ってきたが,中々再現性の高い育成条件を得る事ができなかった.現在も引き続き実験条件を絞り込んでいる所である.また本年度は新たに軽希土類を含むPrMn2O5及びNdMn2O5の試料作成を試みた.これらの物質は,十分な大きさの単結晶育成が世界でもまだ成功していない為,誘電分極測定や,中性子・X線散乱実験がほとんど行われていない.本研究では,まず純良な粉末試料を固相反応により作製した,X線構造解析を行って,目的の組成が出来ている事が確認できた.更に,セラミックス状態にして分極測定を行った所,分極が温度の低下とともに現れ,しかも更に低温で分極の向きが自発的に反転する現象を発見した.磁化測定との対応から,磁気転移に伴って分極反転が起こっている可能性が示唆される. マルチフェロイック物質YMn2O5における強誘電相の結晶構造解析を,放射光X線回折実験によりおこなった.単結晶球形加工装置を用いて,測定結晶を200ミクロンの球形にして,形状補正をminimizeした.「にせ」の強度情報を与える多重反射を避けながらブラッグ反射強度を高精度で測定するアルゴリズムを開発し,今回の測定に適用した.その結果,解析の信頼度は飛躍的に向上した.前年度以前は,試料の冷却時における温度不均質により,実際の試料の温度が安定せず,強誘電相における構造解析実験が安定しておこなえなかったが,本年度に低温ガス吹き付け装置の大幅な改良を行い,試料付近の温度勾配分布を小さくする事に成功し,低温での安定した測定を成功させた.現在この技術に関して特許の申請を検討中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶の育成はまだうまく行っていない部分が多いが,最適条件をすでに見いだしつつあるので,来年度には成功すると思われる.更に軽希土類RMn2O5の粉末試料において,世界初の誘電分極測定を行い,磁気相転移に伴う電気分極反転を発見した.磁場による新たな電気磁気効果の発見に繋がると期待できる.来年度はその単結晶育成に着手し,分極方向を正確に決める事と,中性子回折実験により微視的磁性をあきらかにしたい.また,放射光による超精密結晶構造解析に関しても,多重反射回避アルゴリズムがうまく機能し,低温ガス吹き付け装置の改良により,試料付近の温度勾配分布が均質になり,低温における高精度の測定が可能になった.
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Strategy for Future Research Activity |
154SmMn2O5の結晶育成について,育成条件の最適化を行い,単結晶を育成し,中性子回折による結晶・磁気構造解析を行う.実験は国内ではJ-PARC,海外では韓国原子炉研の中性子回折装置を用いる.また,本年度新たに発見したNdMn2O5における電気分極反転現象について,単結晶を育成して誘電分極測定および中性子回折実験を行い,微視的磁性と巨視的誘電性の関係を明らかにする. 放射光実験では引き続き強誘電変位の検出を行う.本年度までに多くの実験条件が最適化できたので,次年度は必ず成功すると確信している.また硬・軟X線共鳴磁気散乱実験を行い,希土類磁気モーメントとMn磁気モーメントを分離して観測し,磁気構造を更に精密に決定したい.この手法は中性子が使えないSmMn2O5やGdMn2O5にも適用できるので,本年度はそれらの物質から測定を順次行って行く. 外場応答の探索の為に,磁場中誘電分極測定も行う.その為に東北大学金属材料研究所の強磁場センターの研究課題に申請しており,次年度の課題として採択されている.新奇な外場応答が見つかった場合は,磁場中中性子回折・及び磁場中放射光共鳴散乱実験を行い,外場応答の微視的起源を明らかにしたい..
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験室のX線発生装置に新たに回転陽極ターゲットを製作し,導入を試みていたが,ターゲットとして銀とモリブデンの2つの金属の帯を蒸着させて,複数種の特性X線を同時に利用できる,画期的なものを考えていた.金属蒸着業者と様々な試行錯誤・検討を重ねたが,様々な技術的困難があり,当該年度中に製作して納入する事が出来なくなった. 上記のターゲット開発について当該年度終盤にようやく製作の見通しがたった.予算の見積もりは230万円である.次年度の夏前には仕様を確定させ,発注を行う予定である.もし技術的困難が(研究期間中に)克服不可能となった場合,更にエネルギー分解能の高いシリコンドリフト検出器を購入し,実験室のX線回折装置に組み込む.またGd2O3の安定同位体の購入を行う.
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Negative magnetostrictive magnetoelectric coupling of BiFeO32013
Author(s)
S. Lee, M. T. Fernandez-Diaz, H. Kimura, Y. Noda, D. T. Adroja, S. Lee, J. Park, V. Kiryukhin, S.-W. Cheong, M. Mostovoy, and J.-G. Park
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 88
Pages: 060103/1-5
Peer Reviewed
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