2012 Fiscal Year Annual Research Report
走査型プローブ顕微鏡による2物体接近時のトンネル障壁崩壊に伴う力と電流変化の解析
Project/Area Number |
24340068
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
新井 豊子 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20250235)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 表面・界面 / 走査型プローブ顕微鏡 / トンネル障壁 / 相互作用力 |
Research Abstract |
超高真空非接触原子間力顕微鏡/走査型トンネル顕微鏡(UHV nc-AFM/STM)を活用して2つの物体を接近させ、「2物体間に働く力」および「流れる電流」の印加電圧応答と距離依存性を計測する。 1.相互作用力・電流・エネルギー散逸等の高感度同時計測システムの構築 1-1 電子回路系のシステムアップ nc-AFMでは、カンチレバーをその固有振動数fで自励発振させつつ、探針と試料間の相互作用力によって変化する固有振動数のずれ(△f)を高感度計測する。その信号検出部アンプの周波数帯域を最適化してS/N比を向上させ、力の検出感度を向上させた。 1-2 高感度力センサーの開発重 市販の時計用音叉型水晶振動子の片側プロングを僅かに削り、先鋭化したタングステン探針を取り付けてnc-AFM用力センサーとして動作させた。ここで、削り量とタングステン探針と接着剤の重量を制御して力センサーの固有振動数が、元の音叉型水晶振動子の固有振動数に近くなるようにすることが重要である。この2本プロング型水晶力センサーのQ値は超高真空中で、40000~50000になり、高感度化が期待できる。実際に使用したところ、Si(111)7x7再構成表面の原子分解能像取得に成功した 2.測定・解析 試料はSi(111)7x7再構成表面で、Siカンチレバーを用いて、△f一定モードでnc-AFM/STM像を取得した。 Nc-AFM像は原子位置で、凹んで観察された。探針試料間距離は約1nmと推定され、トンネル電流が僅かに流れ始めた距離である。電流像は、原子上で電流が多く流れ、散逸エネルギーは原子上で減少した。これは、以下のことを捉えたと考察した。(1)ダングリングボンドにとらわれている電荷の分布が変化し、局所的な接触電位差(CPD)が変化した。(2)トンネル電流が流れることにより、抵抗によりバイアスがドロップし、探針試料間にかかる電圧が降下した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気回路系のシステムアップを行い、感度が向上し、僅かな相互作用力変化が検出可能になり、1nm程度離れた距離でのトンネル電流変化と、相互作用力変化を同時計測できた。 音叉型水晶振動子を用いて、2本プロング型の力センサーを開発し、原子分解能像の取得に成功すると共に、なお一層の感度向上が期待できるデータが得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り推進する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年2月にイオンゲージの購入を計画し、仕様を詰めたところH24年度の残予算内に収まらないこと、かつ、H24年度内に納品が完了しないことが判明したため、H24年度予算を繰り越し、H25年度予算と合算して購入することとした。なお、本物品はH25年4月19日に納品が完了した。
|