2013 Fiscal Year Annual Research Report
走査型プローブ顕微鏡による2物体接近時のトンネル障壁崩壊に伴う力と電流変化の解析
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24340068
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
新井 豊子 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20250235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 表面・界面 / 走査型プローブ顕微鏡 / トンネル障壁 / 相互作用力 |
Research Abstract |
1.高感度力センサーの開発:本研究で求められる力センサーの性能は、0.1 nm以下の小振幅で力感度1 pNを実現する高いQ値と、試料表面への引き込み凝着を起こさない高いバネ定数を持ち、探針の電位制御ができることである。従来技術として、市販の音叉型水晶振動子の片方のプロングを基板に固定し、固定されていないもう片方のプロングにタングステン等の金属探針を接着した、qPlusセンサーと呼ばれる力センサーが利用されている。本研究では、音叉形状の力センサーを試作し、この力センサーは、非常に高いQ値が維持され、nc-AFMの力センサーとして高感度化できることを実証した。また、 [111]方向を向いたシリコン単結晶を探針として用いるため、シリコンのエッチング法を開拓した。 2.ナノピラー成長技術に基づく探針調整:H24年度に電子線照射下でSiナノピラー成長実験をしたところ、ナノワイヤー状の物質が成長した。その組成を調べたところ、タングステン酸化物であることが分かった。タングステン酸化物のナノロッドは走査型トンネル顕微鏡用の探針として応用された実績があり、本研究で開発している高感度力センサーに取り付ける探針に利用するため、種々の成長条件を検討し、組成・結晶構造を調べた。また、ナノピラーシリコン探針先端への水素、アンモニア基の吸着法を探査した。 3.試料の調製と測定・解析:清浄化し表面にダングリングボンドを多数持つSi基板にアンモニアガスを吹き付けると、NH2、NH、Hなどに分解してダングリングボンドと結合する。Si(111)7x7再構成表面で、表面のダングリングボンドの一部がこれらのアンモニア由来の基で終端された試料と、アンモニア由来基で終端された可能性のあるシリコン探針間の力を解析したところ、Si-Si間の共有結合力以外に、水素結合と考えられる引力や、ローンペア同士の斥力などが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
独自の着想により、音叉形状をした力センサーを開発した。本力センサーは、従来の力センサーよりも高感度に微弱な相互作用力から、試料表面への引き込み凝着を起こさずに強い近距離力まで測定可能である。 この力センサーに取り付ける探針として、垂直に伸びたダングリングボンドを持つ[111]方向を向いたシリコン先鋭化探針の作成法をほぼ完成させた。この探針先端に、分子及び、官能基の吸着に取る組む準備が調っている。 現在までに解析した相互作用として、Si-Si間の共有結合、NH2:H間の水素結合、NH2のローンペアと、SiダイマーのバックルアップしたSiにほぼ2個の電子が局在化したダングリングボンド間の斥力を解析した。ローンペア間の斥力は当初想定していなかったが、研究の過程で新たに見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
Si探針を原子レベルの空間分解能で、3次元的に構造評価するため、電界イオン顕微鏡(FIM)により評価する。Siは電界蒸発しやすいため、FIMによる評価は難しいとされているが、探針の原子レベルでの構造評価が、試料との定量的な相互作用力・トンネル電流評価につながる。 平成26年度は、配位結合、水素結合および二水素結合の解析を予定しており、現在までの達成度から考えて、順調に成果が期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料及び探針修飾のためのガス導入ラインを増設するためH25年度から準備を進めていたが、一部の納期が間に合わい予定となったため、納期が間に合う部分のみH25年度に購入し、他のガスについては、H26年度に増設を検討する。 平成26年度中に、本件経費総額を、計画的に使用する。
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