2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ細孔中の水分子ネットワークにおけるラジオ波帯プロトン伝導ダイナミックス
Project/Area Number |
24340071
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 広志 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30275292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田所 誠 東京理科大学, 理学部, 教授 (60249951)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロトン伝導 / 水ナノチューブ / 水分子 / 水素結合 / ナノ多孔質 / インピーダンス / 水和 / プローバー |
Research Abstract |
微小な分子性ナノ多孔質単結晶試料において、ラジオ波からマイクロ波域のインピーダンス測定を実現するため、プローバーシステムを試作した。本測定の鍵は、試料端面と接触する白金製電極探針の先端部の形状にあった。針状、半円状など、いろいろ試したが成功せず、最終的には平板状にすることで測定が行えた。また、より接触抵抗を下げることを期待して半導体製品や、医療現場で使用する幾種類かの伝導グリースを購入して試した。非常に薄く探針に塗ることで測定が行え、非常に小さい試料に対して有効であることが分かった。大きいサイズの試料に対しては、水溶液に浸したまま、白金電極を試料の両端面に接触させた状態で測定できるようにした。ここで、水溶液を通じての伝導性を除去するため、絶縁性の専用基板を開発した。探針の校正は、LCRメータの場合、オープンとショートで行う。本計画で新規に導入したインピーダンスアナライザでは、半導体基板のテストに用いられている校正基板を使用して、オープン、ロード、ショート測定を行う。一連の測定をパソコンで自動計測するためのプログラムを作成した。 初年度の試験測定は、数mmの大きさの試料が得られているNi(cyclam)試料を用いて行った。プローバーにLCRメータを接続して、複素伝導率の周波数分散、および直流バイアス電圧依存性を測定した。その結果、ナノ空間内に束縛された水分子双極子の配向変化に起因した応答が捉えられた。インピーダンスアナライザによる測定でも周波数変化を捉えたが、その原因については次年度以降引き続き実験と考察を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プローバーの白金製電極探針の形状と接触の問題を解決するために、多くの時間と労力を費やしたが、当初想定していた時間範囲で納まった。本研究計画を開始後、分担者がNi(cyclam)試料の大型化に成功し、プローバーのテスト実験を行う上で最適な試料を得ることができた。本試料で、探針と計測機器の調節、および予備実験を行った。ここまでの進展は、年度当初に作成した計画実施計画にほぼ従っている。
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Strategy for Future Research Activity |
典型的な分子性ナノ多孔質結晶に関して、そのナノ空間内に存在する水分子ネットワークの構造、プロトン、配向欠陥の各ダイナミックスを本格的に調べる。そのために、プローバーを用いた伝導率・誘電率の周波数分散の実験を推進する。また、狭い温度域に限られるが、温度を可変できるように試料ホルダーの改良を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。-20~50℃の温度範囲で、プローバー測定を行うために、試料を装着する部分の改良を行う。同時に、試料が置かれた空間の水分子含有量を制御するために、試料ホルダーの相対湿度を調節する機構を製作する。また、プローバー実験に使用する試料の水和状態を確認するために、既存の赤外分光装置に偏光器を設置して赤外スペクトルを詳細に調べられるようにする。
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Research Products
(8 results)