2013 Fiscal Year Annual Research Report
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24340072
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
倉本 義夫 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70111250)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 近藤格子 / 連続時間モンテカルロ法 / 動的平均場理論 / 2チャンネル近藤格子 / リフシッツ転移 / 複合体秩序 / 奇数周波数超伝導 / 非クラマース状態 |
Research Abstract |
本年度の研究成果として,(1) 非自明な秩序として,伝導電子と局在f電子の両方を含む超伝導複合体秩序の存在を確立したこと,(2)重い電子の磁気秩序相の内部にフェルミ面の変化をともなう転移(電子相関のない系でのリフシッツ転移に相当)を出版論文と国際会議などで公表したこと,(3) 伝導電子とf電子のクーロン反発力U_fcを考慮した系の研究を開始したこと,が挙げられる。以下に概要を述べる。 (1) 非クラマース結晶場状態を持つ2チャンネル近藤格子の秩序として,遍歴多極子に対応する複合体秩序は昨年度までに同定していた。本年度は対称性の考察にもとづいて数値計算を進め,ついに超伝導複合体秩序を見出した。この秩序は別の見方をすると,伝導電子の奇数周波数超伝導とみなすこともできる。本成果は学会で報告し,Phys.Rev.Lett.(2014)にも掲載が決定している。 (2) 近藤格子の量子臨界点近傍で重い電子が局在化するか否かについては,長年の論争がある。我々は昨年度からの研究で,反強磁性量子臨界点では遍歴性が保たれ,局在性が強まるのは,その低温側に生ずるリフシッツ転移であることを示した。この成果はPhys.Rev.Lett.(2013)に掲載され,国際会議でも公表された。 (3) 磁場に鈍感な重い電子の出現は数年前から実験的に報告されているが,理論的説明はまだなされていない。我々は電荷近藤効果に注目して研究を進めた。通常の価数揺動の特性エネルギーは近藤温度より大きいが,U_fcと多チャンネルの効果で価数揺動の特性エネルギーは減少し,量子臨界現象も起こることが知られている。本年度はスピンを無視したモデルで繰込み群解析理論と連続時間モンテカルロ法による数値計算を併用し,初めて電荷近藤効果の動力学的知見を得た。結果はJPSJに公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非クラマース系の独特な超伝導秩序状態を見出し,対称性の考察を行った。また,電荷近藤効果の研究に着手し,重い電子の新しい側面を解明しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,複合体超伝導が通常の超伝導と異なる点,およびその実験的検証手段を調べる。また電荷近藤効果による質量増強と実験との対応を吟味する。さらに,非クラマース近藤格子の秩序と,URu2Si2などで観測されている隠れた秩序の関連を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費がほかの経費から調達できたために繰越金が生じた。 次年度使用額は,平成26年度請求額と合わせて,平成26年度の物品費と旅費に有効活用される。
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Research Products
(17 results)