2013 Fiscal Year Annual Research Report
電子とプロトンが相関した単一分子種有機伝導体の物性制御
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24340074
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 初果 東京大学, 物性研究所, 教授 (00334342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 顕 東京大学, 物性研究所, 助教 (20589585)
磯野 貴之 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット量子物性グループ, 研究員 (70625631)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子性物質 / 水素結合 / 単成分伝導体 / 伝導性 / 誘電性 |
Research Abstract |
強相関電子系において、電子に比べて約1800倍重いプロトンのダイナミクスを相関させた場合、アボガドロ数の電子系にどのような摂動が与えられるかは未知の研究課題である。本研究では、分子性物質において、2次元伝導層をプロトンでリンクした擬2次元電子系を構築し、プロトンのダイナミクスと2次元電子系が調和的、あるいは非調和的に連動する新たな電子状態の創成を目指した。 表題のプロトンー電子相関系分子性結晶において、構成成分であるカテコール誘導体(H2Cat-EDT-TTF)の有機合成と高品質な単成分純有機伝導体κ-[H3(Cat-EDT-TTF)2]単結晶の育成を平成24年度に行い、極低温で量子スピン液体であることを見出した。平成25年度は、その重水素体結晶κ-[D3(Cat-EDT-TTF)2]を作成し、放射光を利用した精密X線結晶構造解析と分子軌道、分子間相互作用、およびバンド計算を水素体および重水素体の両者で行い、比較検討により、180Kにも及ぶ巨大な重水素効果の機構を明らかにした。 (1)ドナー分子の重水素化とその単結晶κ-[D3(Cat-EDT-TTF)2]の作成 水素体ドナー分子を用いて、重メタノールを溶媒として定電流電解法を行い、重水素化率の高い良質の単結晶を作成した。 (2)放射光を用いた重水素体の精密構造解析と電子密度解析による重水素位置の決定 KEK-PFの強い放射光光源を用いることにより、(1)で作成したκ-[D3(Cat-EDT-TTF)2]の精密構造解析を行い、重水素の位置を決定した。その結果、室温における水素結合は、重水素体の場合やや長いこと、低温相においては、水素結合中の重水素が非対称化し、それに伴いパイ電子系も非対称化して電荷秩序状態となり、絶縁化するが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
水素体を原料として、重メタノールなどの重水素化溶媒を用いることにより、良質の単結晶を得ることに成功した。この単結晶を用いて、高エネルギー研究所の放射光を用いることにより、重水素の位置を決定することができた。そして、相転移後の低温相で、水素結合中の重水素の非対称化に伴い、パイ電子系も電荷分離をした。このように、強相関系とは異なる起源で電荷秩序化をしたため、絶縁体化したことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
重水素化した良質の単結晶を得ることに成功したので、伝導性、磁性、誘電性を測定することにより、180Kにもおよぶ、申請者が知るかぎり、最高の重水素化転移温度の振る舞いについて明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、重水素体の合成と、詳細な構造解析を行った後、物性測定を行う予定であった。しかし、良質なサンプルができるのが予定より遅くなったため、測定を行うための大量の冷媒が必要なくなった。来年度は、測定装置を動かすために、大量の寒剤を用意する予定である。 上記で述べたように、本年度は伝導性や磁性の測定を行うために、大量の寒剤を購入する予定である。また、これまでの成果を発信するために、招待講演を行う海外出張費にも用いる予定である。
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Research Products
(40 results)