2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24340077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
益田 隆嗣 東京大学, 物性研究所, 准教授 (90313014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
左右田 稔 東京大学, 物性研究所, 助教 (40463905)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 偏極中性子 / 中性子散乱 / フラストレート系 / マルチフェロイクス / スピン・ダイナミクス / エレクトロマグノン |
Research Abstract |
二点相関関数を直接プローブする中性子散乱は、物質の構造決定とミクロなダイナミクスの測定を得意としており、スピン液体やマルチフェロイクスなど新規量子状態のスピン相関と素励起の観測に大きな威力を発揮してきた。これまでのダイナミクス測定は、非偏極中性子スピンによる実験が主流であったが、偏極中性子を用いると、磁気励起とフォノン励起の分離、磁気・格子ハイブリッド励起の観測、スピン縦揺らぎと横揺らぎの分離などが可能となり、情報量は格段に増える。そこで本研究課題では、既存の偏極弾性中性子散乱分光器(原子力機構JRR-3設置PONTA分光器)に改良を加え、偏極中性子非弾性散乱装置を開発し、これまでとは質の異なるデータ収集を可能とし、新規量子状態の本質に迫ることを目的とした。これまでに、スーパーミラーを用いた偏極システムの設計を行い、システム実装を行ってきた。一方、大強度陽子加速器施設 物質・生命科学実験施設(J-PARC/MLF)や海外中性子施設を利用して、量子スピン系、マルチフェロイクス系、フラストレーション系等の研究を推進した。 たとえば、マルチフェロイック物質Ba2CoGe2O7は、電気分極がスピン演算子の対称2次テンソルというシンプルな形で表される珍しい物質として、また、分極間相互作用と磁気相互作用の関係を解明できる物質として着目されてきた。我々のグループでは、J-PARC/MLFとスイスPSIにおける中性子磁気散乱と磁化測定を行うことにより、スピン・ネマティック相互作用の存在を、初めて観測することに成功した。さらに、中性子磁気スペクトルの解析により、電気分極の誘電エネルギーを決定するという新しい試みも行った。誘電エネルギーの大きさも示すスピン・ネマティック相互作用定数は、電場によるスピンの制御のしやすさを表しているため、マルチフェロイックデバイスの性能示数であることが提案された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた中性子偏極子であるホイスラー結晶の納期が3年以上と、非常に長かったために、偏極方式の変更を行う必要があったため、偏極中性子システムの構築という面では若干遅れている。しかし、通常の中性子散乱実験によるフラストレーション系やマルチフェロイクス系の研究は順調に進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
偏極中性子システムの構築を完結させるとともに、フラストレーション系、マルチフェロイクス系、量子スピン系の研究を強力に推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中性子実験用試料の準備・予備測定システム構築のために使用する予定であった。なかでも試料準備システムは、作製する試料により仕様が変更されるため、使用額の一部を今年度用に取っておく必要があった。 今年度早期の段階で、電気炉等実験用試料準備システム構築のために予算を使用する。
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Research Products
(21 results)