2013 Fiscal Year Annual Research Report
複合自由度が競合・協調した多軌道強相関電子系における新奇な軌道物性の探究
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24340080
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊藤 正行 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90176363)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 義明 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60262846)
清水 康弘 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (00415184)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 多軌道系 / NMR / 高圧物性 / 鉄系超伝導体 / ネマティック秩序 / 重い電子系 / スピンクロスオーバー |
Research Abstract |
本研究では、遍歴と局在の狭間に位置する多軌道を持った強相関3d電子系において、電荷・スピン・軌道・格子の自由度が競合あるいは協調して現れる新奇物性の解明を目指した研究を進めている。本年度は、主に以下の成果を得た。1.重い電子系的な振る舞いを示すスピネル型バナジウム酸化物LiV2O4に対して、約10GPaまでの高圧下でNMR実験を行い、約6GPa以上で、1次転移である金属絶縁体転移に伴い、金属相と絶縁体相が共存することを見出した。さらに、この金属相は、非磁性状態をとることを明らかにした。また、核スピン格子緩和率とナイトシフトの測定から、金属相では、反強磁性磁気揺らぎが低温低圧領域で大きいことが分かった。2.鉄系超伝導体Ba(Fe1-xCox)2As2の正方晶相で報告されている面内2回対称性について、昨年度よりさらに広いCo組成までNMR実験を行い、超伝導が出現する組成域でも面内2回対称性が存在することを明らかにした。この結果は、局所的な軌道秩序に起因するとする理論モデルと矛盾せず、鉄系超超伝導体では軌道自由度が重要であることを示唆している。3.混合原子価を示すクロム酸化物K2Cr8O16の金属絶縁体転移の舞台となる電子構造の形成は、クロムと酸素の強い軌道混成に起因することをトランスファー超微細磁場の解析から示した。さらに、LaCu3Cr4O12で起きる相転移の起源について調べた。4.LaCoO3は非磁性低スピン状態から磁性的なスピン状態にクロスオーバーすることが知られている。LaCoO3におけるスピンクロスオーバーに伴うダイナミクスの解明を目指し、核スピン格子緩和率の測定を行い、クロスオーバーによる核スピン格子緩和率の特異な磁場依存性を見出した。この結果は、スピンクロスオーバーの機構と密接に関係していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究対象としてとりあげた鉄系超伝導体、クロム酸化物、コバルト酸化物の研究は、おおむね当初の研究目的と計画に沿って順調に進展した。一方、バナジウム酸化物LiV2O4は、10GPaまでの高圧NMR実験によって高圧物性の理解が著しく進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度研究対象としたバナジウム酸化物LiV2O4の高圧NMR測定は、V核の測定を引き続き進め、Li核のNMR測定の結果と合わせて、高圧下での磁気揺らぎの全体像を把握する。さらに、今後、新たなクロム酸化物、バナジウム酸化物、鉄系超伝導体関連物質、ニッケル化合物などの巨視的物理量の測定およびNMR実験などを行い、軌道自由度と電荷・スピン・格子の自由度が競合あるいは協調した多軌道系の新奇物性の研究の進展を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の当初計画では、主に、試料合成、測定用電子部品などの消耗品費および低温寒剤代金として執行する予定であったが、特に、試料合成に予定していたほど費用がかからなかった。また、次年度に合成を予定している試料は作成条件が難しく、多めの消耗品費が必要となることが予想されるため、次年度使用額として残した。 次年度使用額と次年度分として請求した研究費を合わせて、試料を作成するための原料、るつぼ、石英ガラス、特殊ガス、温度センサー、NMR測定用電子パーツ等の消耗品などの物品費、および、成果発表のための旅費、低温寒剤代金などとして使用する計画である。
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Research Products
(25 results)