2013 Fiscal Year Annual Research Report
低温高圧下における結晶構造決定による鉄系超伝導体の圧力効果の解明
Project/Area Number |
24340088
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高橋 博樹 日本大学, 文理学部, 教授 (80188044)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨田 崇弘 東京大学, 物性研究所, 研究員 (20437502)
中野 智志 独立行政法人物質・材料研究機構, 先端材料プロセスユニット, 主幹研究員 (50343869)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 高温超伝導 / 鉄系超伝導 / 圧力効果 / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
本研究では、鉄系超伝導体の低温高圧下での結晶構造を精密に測定することにより、結晶構造とTcの関係を明らかにし、超伝導のメカニズム解明に資する基礎データを得ることを目的としている。高エネ研PFの高圧X線ビームライン(BL-18C)に、冷凍能力が十分に大きく振動の影響を最小限とする高性能の冷凍機を導入した。高圧装置のサンプルは極小であるため、わずかな振動で試料まわりの高圧装置構成材料の回折線を拾ってしまうため、振動を抑えることが重要である。測定を行ったところ、振動は5マイクロメーター程度であり、十分な精密測定ができることがわかった。鉄系超伝導体をはじめとする超伝導を示す物質のTcの圧力効果は大きいが、物性の基本となる結晶構造を高圧下で決定する実験は意外と進んでいない。また、高圧X線回折実験の難しい点の一つに静水圧性の問題がある。低温高圧下における圧力媒体の静水圧特性の検証と選択については、中野博士を中心として検討を進めている。 昨年度は設置した冷凍機を用い、水素をドープされた1111型鉄系超伝導体および新しく発見されたLaOBiS2について低温圧力下で結晶構造を調べた。 細野グループによってLaFeAsO1-xHxが作製され、約50%まで元素置換がされることで、オーバードープ領域まで調べることが可能となった。Tcの組成変化は、2つのピークを示し、ピークの谷間の組成(x=0.2)のTcが高圧下で52Kまで上昇することを示した。これはLaを含む1111型鉄系超伝導体の中で最高のTcである。このような高いTcを示すメカニズムを調べるために低温高圧X線回折実験をおこない、現在は解析を進めている。また、新しく発見された超伝導体、LaOBiS2については、高圧下で構造相転移を示すことを見つけた。相転移に際し、Tcが大きく変化することから、構造と超伝導の関係について調べている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、鉄系超伝導体の低温高圧下での結晶構造を精密に測定することにより、結晶構造とTcの関係を明らかにし、超伝導のメカニズム解明に資する基礎データを得ることである。低温高圧下での結晶構造測定には、高エネ研PFの高圧X線ビームライン(BL-18C)を利用しているが、従前より使用している冷凍機は振動が大きく、高圧装置を冷却するには容量が不足していたことから、冷凍能力が十分に大きく振動の影響を最小限とする高性能の冷凍機の導入を行った。高圧装置のサンプルは極小であるため、わずかな振動で試料まわりの高圧装置構成材料の回折線を拾ってしまうため、振動を抑えることが重要である。冷却装置を設置し測定を行ったところ、振動は5マイクロメーター程度であり、十分な精密測定ができることがわかり、研究を遂行できるのに十分な性能を得ることができた。測定試料としては鉄系超伝導体LaFeAsO1-xHxや新しく見つけられたLaOBiS2など、超伝導への圧力効果の大きな物質にたいし、室温から低温まで構造解析が進んでいる。研究はおおむね計画通り進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」でも記述したように、おおむね計画通りに研究は進展している。これまで測定を行ってきた物質に加え、今年度は鉄をベースとしたスピンラダー化合物の測定を行っている。銅酸化物においても高温超伝導体の類似構造を持つスピンラダー化合物が見つかっており、本研究代表者も共同研究者となって高圧下で超伝導を示すことが発見されている。鉄系スピンラダー化合物は磁性絶縁体であるが、電気抵抗などの圧力効果は大きく、高圧下での物性を詳しく調べるために、低温高圧X線回折実験は不可欠である。最近は物質開発が非常に活発でたくさんの興味深い物質が合成されている。高圧下での物性測定も非常に活発に行われ、これらの物性を理解するためには高圧X線回折実験が必須となっている。今後、低温高圧X線回折装置の周辺のアプリケーションの整備を進め、少ないマシンタイムのなかから、重要度の高い順に測定を進めていく予定である。また、本研究計画終了後も、継続的に課題申請し研究を進めていく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はおおむね順調に進展している。本研究の遂行には、振動の影響を最小限とする冷凍機を導入し、温度4 K、圧力100 GPaまでの実験が可能な高性能の低温高圧X線回折システムを構築することが基礎となっており、そのために購入した主な装置は低振動DAC冷却用極低温装置、冷凍機搭載用X線回折計5軸ステージなどである。後者のステージは平成25年度中に設置され、順調に稼働し、最終的に調整作業のために大きく予算を使用せずにすんだ。そのため、未使用予算と当該年度予算を合わせて、元々平成25年度に購入予定であった、ガス圧制御装置付きメンブレム型ダイヤモンドアンビルセルとダイヤモンドアンビルを購入するため。 低温高圧下でX線回折実験を行うため、ガス圧制御装置付きメンブレム型ダイヤモンドアンビルセルとダイヤモンドアンビルを購入する予定である。平成25年度は既存の装置を使用しているが、新しい低温装置に特化した装置を購入する予定である。さらに高エネ研PFのBL-18Cの低温高圧X線回折計周辺のアプリケーションの整備を合わせて進めていく予定である。
|
Research Products
(18 results)
-
-
-
-
-
[Journal Article] Simultaneous Pressure-Induced Magnetic and Valence Transitions in Type-I Clathrate Eu8Ga16Ge302013
Author(s)
Takahiro Onimaru, Satoshi Tsutsui, Masaichiro Mizumaki, Naomi Kawamura, Naoki Ishimatsu, Marcos A. Avila, Shuhei Yamamoto, Haruki Yamane, Koichiro Suekuni, Kazunori Umeo, Tetsuji Kume, Satoshi Nakano, Toshiro Takabatake
-
Journal Title
J. Phys. Soc. Jpn.
Volume: 83
Pages: 013701-4
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-