2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24340090
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
李 哲虎 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 主任研究員 (80358358)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 鉄系超伝導体 / 中性子非弾性散乱 / スピン揺動 / スピンギャップ |
Research Abstract |
本年度は中性子非弾性散乱実験に用いるBa_<1-x>K_xFe_2As_2単結晶のうち組成がx=0.5,0,66,1.0のものを作製することに成功した。各組成単結晶を50~200枚程度をアセンブルし、実験に用いた。またBaFe_2(As,P)_2単結晶の作製にも成功し、中性子非弾性散乱実験を実施した。 Ba_<1-x>K_xFe_2As_2のスピン揺動の測定では、x=0.5,0,66の超伝導相において明瞭なレゾナンスピークを観測した。また、磁気散乱ピークはインコメンシュレートであり、K濃度が増加するに従い、インコメンシュラビリティーが増大することを確認した。超伝導の対称性がx~0.7近傍で変わることが示唆されており、今後オーバードープの測定を進め、インコメンシュラビリティーと超伝導転移温度の相関関係を明らかにしていきたい。また、J-PARCでの実験により、KFe2As2のスピン波をE=60meV付近まで明らかにした。これにより、鉄系超伝導体における典型的な遍歴磁性のスピン波が明らかとなった。 BaFe_2(As,P)_2では、オプティマムドープのスピン揺動を明らかにした。超伝導相でレゾナンスピークを観測し、レゾナンスエネルギーが鉄ヒ素面間方向で分散を持つことを明らかにした。これは母物質の3次元反強磁性相関の揺らぎによるものであることが、他の鉄系超伝導体のレゾナンスピークとの比較から明らかとなった。本結果はレゾナンスピークがスピンエキシトンによるものとするモデルと矛盾しておらず、磁性と超伝導が強く相関していることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた中性子非弾性散乱実験用の単結晶作製に成功し、磁気非弾性散乱ピークの測定に成功した。 依然として、国内の研究用原子炉(JRR-3)は再稼働できていないが、国外の研究機関にて実験することにより、滞りなく研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当面、研究用原子炉(JRR-3)が再稼働しない可能性がある。その場合でも研究が推進できるよう、海外の研究機関にて中性子非弾性散乱実験を行う用意を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度に実施予定であった海外での中性子非弾性散乱実験などがH25年度にずれ込んだため、直接経費次年度使用の助成金が発生した。H25年度は主にその海外での中性子非弾性散乱実験及び試料作製などに研究費を使用する予定である。
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