2013 Fiscal Year Annual Research Report
岩石破壊実験から探る地震活動の統計性と力学量の関係
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24340091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
波多野 恭弘 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20360414)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | グーテンベルク・リヒター則 / 大森則 |
Outline of Annual Research Achievements |
H25年度においては、破壊現象における統計パラメターと岩石の物理量(とくに応力)の間に成り立つ定量的関係式の解明を目的として、岩石をモデル化したランダム媒質モデルについて剪断数値実験を行った。粒子再配置に伴う不連続的なエネルギー低下をアコースティックエミッションイベントをとみなし、その時系列データを記録した。充分な統計性を確保するために、長大な実験時間を必要としたが、計算資源を活用して効率的な研究の遂行を図った結果、充分なデータを記録することができた。 このデータをもとにして、グーテンベルク・リヒター則におけるb値と応力絶対値の間の関係を求める作業を行った。具体的には、ある長さのタイムウィンドウを考え、その間に発生した微小破壊イベント群に関して規模別頻度分布を得た。一つのタイムウィンドウに一つの規模別頻度分布があるので、それぞれにb値が定義される。各タイムウィンドウのb値と平均応力値がウィンドウの数だけ得られ、そこから目的の一つである「b 値と応力の定量的関係」が得られた。結果は、b値が応力の減少関数であることを示しているが、岩石実験などから従来示唆されてきたように反比例関係ではなく、もっと弱い依存性を示すことがわかった。 次に、実験データから大森・宇津則におけるc 値と応力の定量的関係を求めた。この作業を繰り返してデータをコンパイルすることによって、様々な応力レベルに応じた余震頻度分布が得られた。フィッティングによりc値を求め、本研究のもう一つ重要な目的である「c値の応力依存性」を定量的に求めることに成功した。結果は、c値が応力に対して指数的依存性を示すというものであった。この振る舞いは先行するいくつかの理論モデルと定性的に似ていることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画どおりに研究推進補助員を確保して大量のデータを解析することはできず、26年度に一部を繰り越すことになった。しかし最低限の統計的有意性を保証する程度のデータは25年度の間にも解析することができ、当初の予定は最低限達成できた面というもある。しかし主張にさらなる説得力をもたせ、論文としてまとめるためにはもっと大量のデータを解析する必要があり、その作業は26年度に実行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
H26の前半に、Forest-Fireモデルと呼ばれる一種の離散モデルの数値実験を行い、そのデータを研究補助員とともに解析する。b値の応力依存性についてH25で得られたモデル岩石による結果と比較し、その物理的メカニズムを解明する。その結果をとりまとめ、論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
時系列データ解析の高度な知識を持つ研究員が、所属機関の都合により本研究計画の解析作業に参加できなくなった。同様の知識を持つ新たな人材を確保する必要が生じ、そのため当初計画から約5ヶ月の遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究補助員を雇用して、データ解析のスピードアップを図る。助成金はその人件費として使用予定である。
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