2014 Fiscal Year Annual Research Report
高速イオンによる液体阻止能および生体分子(アミノ酸・核酸塩基)の電離断面積測定
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24340096
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 秋男 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90243055)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子衝突 / 生体分子標的 / 二次イオン / 電離断面積 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,高速度イオンによる真空中液体標的の衝突現象を原子スケールで探求するもので,H26年度は最終年度として以下の項目を中心に実験を行った. 1)マイクロイオンビームの液体標的への直接照射法の確立,2)アミノ酸分子等からの二次粒子測定 1)では,液体ジェット用の数十μm径のノズルおよびイオンビーム用にガラスキャピラリを採用し,キャピラリを液中表面近傍に移動させてビームを液中に直接打ち込む方法を確立することができた.真空中の液体標的のイオン衝突研究は世界にも例がなく,本研究が先導的な立場で行っているところであるが,本研究を更に発展させたものとして,液滴(droplet)を対象とした衝突実験も手がけており,同じ液体ながら表面活性度の違いが衝突過程にどのような効果を及ぼすかについての知見を得ている段階である. 2)では,アデニン(アミノ酸分子)の電離分解過程を詳細に調べた.特に3重同時測定法(入射イオン,アデニン分解分子,二次電子)を行うことにより衝突直後の極短時間に生成される初期電離状態を観察することができ,従来にない多くの知見を得ることができた.以上の研究はいずれも世界トップのものであり,特に液体標的に関する諸データは世界の注目を集めており,国際会議の招待講演に選出されている(2013年ICPEAC蘭州,2015年ICPEACトレド,等).研究成果の公開として,日本物理学会(2014年9月中部大,2015年3月早稲田大)で口頭発表(13件),国際会議でのポスター発表(3件)などを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミクロンサイズの液体標的を真空内に作成し,これに加速器から引き出した高速イオンビームを照射する技術は当初から困難が予想されることであったが,技術的側面では概ね解決することができている.但し,マシンタイムの不足等もあり,当初予定を数ヶ月遅れており,国際会議等での発表は次年度にせざるを得ない. なお,国内学会(日本物理学会,等)での口頭発表や,インパクトファクターの高いジャーナル誌に論文として発表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は2014年度が最終年度として計画したもので,加速器(学内共同利用装置として約100名の教職員・学生が使用)を使える時間(MT)に制約があったため,成果発表が半年程遅れており,2015年度に開催される二つの国際会議において発表する予定である.そのため旅費として,70万円程度の経費を2015年度に繰り越している.
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Causes of Carryover |
平成26年度内に当初予定の実験成果を出し,国際会議等で発表する予定であったが,実験で使用する粒子加速器のマシンタイム不足も重なったために,当初計画から半年以上遅延することとなり,会議発表渡航費用等に未使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以下の国際会議において発表予定:1)International Symposium on Swift Heavy Ion in Matter (物質内高速重イオン国際シンポジウム),会期 2015年5月17-21日,ダルムシュタット(ドイツ) 2)International Conference on Photonic, Electronic and Atomic Collisions(光・ 電子及び原子衝突国際会議),会期 2015年7月22-28日,トレド(スペイン)
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Research Products
(5 results)