2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24340098
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮崎 州正 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40449913)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 化学物理 / 統計力学 / 物性基礎論 / ガラス転移 / ジャミング転移 |
Research Abstract |
(1)ガラス転移とジャミング転移の統一的理解 我々は、2次元と3次元の剛体球液体のinherent structures、すなわちジャミング転移点を、大規模の数値実験により計算した。そして、クエンチ前の熱平衡状態における密度に、ジャミング転移点がどのように依存するかを調べた。その結果、動的転移点と呼ばれるMCT転移点より密度が小さい系では、ジャミング転移点が一定であるのに対して、転移点より密度が大きくなると、ジャミング転移点が上昇することが分かった。さらにジャミング状態の剛体球の配置の局所構造の変化を解析した。結晶秩序などの局所的な構造の有無を調べるために、ボンド秩序パラメータや局所エントロピーの相関関数を解析した。その結果、ジャミング転移点が上昇した系においても、ジャミング転移に特有の一種のマージナルな安定性を表す性質である、isostaticistyが保たれていることがわかった。しかし、ボンド秩序変数の相関関数には、小さいが明確な相関長の増大が見られた。これらの発見は、ガラス転移の標準理論の有力な候補の一つであり、平均場理論のシナリオを包含する、ランダム一次転移シナリオを定性的のみならず定量的に支持するものである。 (2)数値実験による平均場描像の検証と理論開発 我々は、ガラス転移の平均場描像を定量的に検証するために、様々なあ長距離相互作用系の液体の数値実験と理論解析を行った。具体的には、相互作用の特徴的な長さが長い、いわゆる「柔らかい」相互作用系の高密度状態におけるダイナミクスを調べた。熱力学的な性質が既にある程度わかっている系として、エマルジョン系などのモデルであるHertzポテンシャル系に注目し、理論的に密度が濃く、Kirkwood不安定の起こるスピノーダル付近の平均場理論の検証を行い、レプリカ理論とMCTの整合性を調べた。数値実験は、やはりHerzポテンシャル系のクラスター相付近のダイナミクスを調べ、クラスターグラスと言うべき、新しい相を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
剛体球のジャミング転移については、当初の計画では空間次元を様々に変えて高次元の数値実験を行う予定であったが、それは実現しなかった。それに対して、平均場描像の検証については、様々な新規ガラス相を発見するなど、計画以上の進展があった。総合的には、研究は順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にひきつづき、ジャミング転移と平均場理論の数値実験による研究を行う。ジャミング転移点の変化が理論のシナリオと整合した結果が得られたものの、その理由は説明がついていない。なぜなら、既存の理論のシナリオは、一般に定性的な予言はできても定量的には役に立たないと信じられてきたからであり、我々の既に得た結果は、ある意味で理論と「一致」し過ぎているのである。これを説明するためには、理論と数値実験による検証が必要となる。平均場理論の数値実験による検証については、初年度に偶然発見したクラスターガラス相を、詳細に調べる。粒子が重なり合いながらもガラス転移する、というのは全く未知の現象であり、直感的にも理解しがたい。その詳細なダイナミクスの検証はまだ緒に就いたばかりであり、今後の急務である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に購入した計算サーバのメンテナンスおよびノートPCなどを中心に、研究課題の遂行に必要な物品を購入する。また、研究課題に関する情報交換と成果を発表するために、国内の研究機関への出張や、国内・国際会議に参加するための旅費として使用する。さらに、研究課題に関連した講演を、国内外の研究者に依頼しその謝金や旅費として使用する。
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Research Products
(19 results)