2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24340098
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮崎 州正 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40449913)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 化学物理 / 統計力学 / 物性基礎論 / ガラス転移 / ジャミング転移 |
Research Abstract |
(1) ガラス転移とジャミング転移の統一的理解 昨年度に引き続き、ジャミング転移と平均場理論の数値実験による研究を行った。2成分剛体球のジャミング転移点の変化が理論のシナリオと整合した結果が得られたものの、その理由は説明がついていなかった。我々は体積分率にして64パーセントと呼ばれるジャミング転移密度より高密度のジャミング密度を得た。これはまさに平均場描像から予言された結果である。しかし、その高密度なアモルファス相の正体は明らかではなかった。我々の扱っている系の取りうる最高密度は、結晶状態の74パーセントであるが、高密度アモルファス相は、結晶相の混入に過ぎないというシナリオを排除しきれていなかった。そこで我々は高密度アモルファス相の局所構造を詳細に調べつくした。具体的には、接触粒子数分布、さまざまな結晶秩序変数分布、振動分布関数、局所的な密度場などを調べた。その結果、局所密度と結晶秩序変数の間には負の相関があること、振動分布関数にはジャミング系に特有のソフトモードの分布が密度の増大にも関わらず不変であることなどを見出した。これは結晶秩序の不在を示す有力な傍証である。さらに局所密度の構造に結晶秩序の痕跡があるかを調べるため、局所構造をすべて数えあげ、そのヒストグラムを作った。その結果、ジャミング密度の増大に寄与している構造は、少なくともFCCやHCPのそれではないことを見出した。 (2) 平均場理論の理論開発 昨年に引き続き、モード結合理論(MCT)とレプリカ理論の2つの平均場描像候補を融合するための理論開発を行った。特に単距離引力を持つ系のガラス転移を高次元極限で解析を行った。この系は斥力ガラス転移から引力ガラス転移への特異点を伴う転移現象があることがMCTにより予言されている。我々はこれをレプリカ理論でも記述できることを解析的に示し、両理論が整合していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ジャミング転移の数値解析については、初年度に比べてかなり解像度を上げた解析結果を得ているが、結晶秩序の不在の傍証を得るのみで直接的な検証に至っていない点で、まだ課題が残っているといえる。 (2)平均場描像の理論検証については、当初の計画にはない引力ガラス系への応用など多様な方向へ研究が発展しており、順調な進展と言える。 (3)初年度、我々が発見したクラスターガラスの検証を当該年度に行う計画をしていたが大きな進展はなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ジャミング転移の数値解析については、引き続き局所構造の詳細な検証を行う。これまではFCCやHCPを主に結晶秩序の痕跡の候補にしていたが、実際の2成分系の結晶構造はより多彩であるはずで、そのinherent structuresと我々の得たアモルファス状態のそれを比較する予定である。 (2)平均場描像の理論解析については、斥力-引力ガラス転移に潜む高次特異点構造を解析する。 (3)初年度にシミュレーションにより発見し、その後十分な進展がなかったクラスターガラス相の数値的理論的研究を実施する。粒子が重なり合いながらもガラス転移する現象は、それに対応するジャミング転移も含め、多くの新規現象の発見が期待できるため、今後の大きな課題である。
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Research Products
(15 results)