2013 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ界面分子バルブと分子マニピュレータによるミクロ輸送の制御と駆動
Project/Area Number |
24340099
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 潤 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10200809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 陽子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80609793)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナノ界面 / 分子マニピュレーター / 輸送 / 液晶場 / 分子バルブ / DDS / フォトニック |
Research Abstract |
本基盤研究では、ソフトマターに内在するナノ界面の動的状態を局所的に制御し、このナノ界面を分子バルブとして界面間の物質輸送を制御する。また、分子マニピュレータの原理を用いて、物質中のナノ界面の分布・構造を人工的に制御し、ミクロな物質輸送を駆動する原理を提唱する。本研究構想で扱うナノ界面は、局所的な相転移により大きな状態変化を起こし、輸送係数の絶対値と異方性に巨大な変化を生み出す。研究期間内の具体的な実現目標は、光伝播を制御するフォトニック液晶バブルと、物質の輸送を制御するDDS液晶ナノバルブであり、それぞれ微小球レーザー、DDSとして応用面でも革新的な物質設計概念をもたらす。 本年度は、ナノ界面分子バルブによる物質輸送制御(DDS(ドラッグデリバリーシステム)液晶ナノミセル)について、液晶ナノミセルを用いて、アクティブDDSとしての機能のモデル化を試行する。ナノミセル中の狭小空間(d~数100nm)において液晶状態が実現されることは、すでに偏光解消光動的光散乱の実験による、ミセル内部の配向揺らぎの存在から確認できており、ある温度を境にこの揺らぎが消滅することで、ミセル中に液体―液晶が存在する。ナノミセル中に薬物を模倣した蛍光性の高分子を封入し、親水・疎水の環境変化による発光スペクトル変化から、薬物のDDSからの放出をモニターした。プロトタイプのPEG側鎖型液晶はアゾ基を持っており、UV光照射によるトランス-シス異性化により、液晶ナノミセルのシェル部のガラス転移や、弾性変化を誘起して研究を発展させている。この転移・変化をスイッチとして、ナノ界面の動的状態変化(ガラスの融解など)を駆動し、薬物放出を促させ、刺激応答型DDSシステムをデザインする研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、液晶ナノバブルの作成に関しては、スメクティック相を内包する状態を得る方法を獲得し、ナノ界面における物質の出入りをマーカー分子を内包させて液晶相転移との関係を見出した。また、マニピュレーションについては、金ナノ粒子を捕捉してフォトニック構造を作成する予定である。今後は、輸送に関してさらに光学系を改良して進める予定である。このように研究は順調な進捗しており、1年後には十分な成果が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、A. 完全ぬれ状態における高分子配向膜界面のガラス転移と液晶分子の配向運動制御について研究する。ガラス基板のビング処理とは、液晶ディスプレイに欠くことのできないプロセス技術である。ガラス基板にスピンキャストされた高分子配向膜は、高温でも固体状態かガラス状態を保持している。代表者らは最近、室温から100℃にガラス転移温度を持つ高分子材料と、ガラス基板の完全ぬれ転移を利用して、ガラス―液体転移によるラビングレス液晶配向原理を発明した。これによれば、ラビング処理をせずに、ネマティック液晶の一様水平配向が実現できる。ラビング処理による多くのデメリットから解放される新しい原理である。 第2にB. 強誘電性スメクティック液晶層間溶媒の局所ガラス転移とCダイレクターの配向運動制御について研究を推進する。強誘電性液晶(スメクティックSC*)相は、10数年前まで新しい高速ディスプレイの材料として脚光を浴びていた。代表者の最近の研究からSC*相に高分子安定化過冷却を応用した場合、高分子化誘起のSA-SC*相転移が起こり、基板に垂直配向の状態においてCダイレクター配向を固定したり、制御したりできることを見出した。そこでこの原理を応用して、高速インプレーンスイッチによる、液晶ディスプレイの原理となる高速光バルブを試作し、透過光の電圧依存性や応答速度を観測する。これらの得られた結果を原著論文として取りまとめとともに、国際会議や国内学会等で成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、実験系の組立に時間を要したために、物品費、消耗品費に余剰を生じたが、26年度は、最終目標に向けて多くの実験消耗品を必要とする。 本年度は、実験消耗品などの経費に剰余金が生じたが、最終年度は具体的な研究目的を遂行するため、多くの実験消耗品・試薬を消費する予定であると同時に、成果を学会、研究会等で公表するための費用として必要である。
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