2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24340100
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂上 貴洋 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30512959)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電気粘性効果 / レオロジー / 相分離 / エマルジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
(I)電気粘性流体は一般に、電場の効果と流動場の効果の相対的な強さに応じて異なった振る舞いを示す。今年度は、流動場の効果が支配的な状況を対象にして理論的考察を進めた。電場は、系に特徴的な長さと異方性を持ち込み、それが界面張力による緩和ダイナミクスに影響を及ぼす。また、粘性応力、界面応力に加えて、マクスウェル応力の寄与が現れる。流動場下での非相溶ブレンドのダイナミクスを記述するDoi-Ohtaの理論(J. Chem. Phys. 1991)を土台にして、上述の電場の効果を摂動としてとりいれることにより、非相溶性ブレンドの電気粘性効果を記述する構成方程式を導出した。マクスウェル応力については、前年度までに導出した公式(T. Sakaue, T. Ohta, Phys. Rev. Lett. 108, 078301, 2012)を用いて、系の統計的なドメイン構造と関連づけた議論をした。
また、導出した構成方程式を用いて、交流電場に対するせん断応力の動的応答を計算し、実験的報告(Y.Na et. al, Phys. Rev. E, 2009)と良い一致を得た。特に、応答関数の実部が「負の窪み」を持つという特徴を半定量的に再現し、その物理的起源について、多自由度系での応答における時間遅れという観点から議論をした。
(II) 相分離(誘電)流体に強い電場をかけると、相分離ドメインが電場方向に引き伸ばされ、極板間をブリッジするコラム状の特徴的な構造を形成する。このような状況下での弾性的性質を理解していくための最初の取り掛かりとして、系のせん断剛性率を計算している。論文(T. Sakaue, T. Ohta, Phys. Rev. Lett., 2012)で導出した公式を用いた計算と、電磁気学で行う誘電体を挟んだコンデンサーの静電エネルギーを求める手法を一般化した計算と二通りでの解析を行い、せん断応力が電場強度、ドメイン構造、組成などにどのように依存するかを考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電場の効果が弱い場合については、構成方程式を導出し、当初念頭にあった実験結果との比較も行い、現象についての深い理解を得ることが出来た。次の目標であった電場の効果が強い場合への展開については、難しい面もあり時間がかかっているが、電場の効果が強い極限においてのせん断剛性率の計算については、目途がたつ段階まで持ってくることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに電場の効果が流動場の効果に比べて弱い場合、強い場合のそれぞれについての考察を進めてきたので、今後は、それを足掛かりに、電場と流動場が競合する状況へと研究を進めていく。すでに強電場により形成された縞状のドメイン構造(二次元)に垂直方向にせん断流をかける状況についてシミュレーションを行っている。せん断流が強くなると、縞構造が不安定化し、シアバンド形成が起こることを予備的な結果として見出している。この現象について、詳細に調べ、理論的解析を行う。電場の効果が弱い場合、強い場合と併せ、非相溶性ブレンドに見られる電気粘性効果の包括的理解を目指す。
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Causes of Carryover |
研究補助として学術研究員を雇用している。そのための人件費を研究期間中に渡って確保するために、計画的に次年度使用額を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究補助員(学術研究員)の人件費。
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