2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24340100
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂上 貴洋 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30512959)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 電気粘性効果 / レオロジー / 相分離 / エマルジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、二相に分離した誘電流体における電気粘性効果の包括的理解を目指して理論的研究を行ってきた。電気粘性流体の振舞いは、外部から印加する電場と流動場の相対的強さに応じて異なる。流動場の効果が支配的な状況では、電場は弱い摂動として取り扱うことが出来る。一方、粘度が大きく上昇する強電場下での振る舞いは応用上重要で、ここでは粘度上昇のメカニズムを相分離流体のメソスケール構造(ドメイン構造)と関連付けて理解することが課題となる。昨年度までは、主に流動場の効果が支配体な場合を考察してきたが、今年度は強電場下での状況の解析に取り組んだ。 誘電率の異なる成分からなる相分離流体に強い電場をかけると、相分離ドメインが電場方向に引き伸ばされ、極板間をブリッジするコラム状構造が形成される。このような状況下での系の弾性応答を解析し、せん断剛性率が電場強度や、流体組成、それぞれの成分の誘電率などにどのように依存するのかを明らかにした。また、系に作用する応力をドメインの界面テンソルと関連付け、電場によるマクスウェル応力を実効的に異方的界面張力として捉えるという見方を提案した。これを用いて、電場下で形成されるコラムの特徴的長さの選択則についてのスケーリング則を導出した。 また、系内に微量の伝導イオンが存在する場合に理論を拡張し、せん断剛性率が二成分の誘電率のみならず、導電率にどのように依存するかを計算した。特に、外部電場が交流電場である場合には二成分の誘電率、導電率により決まる特徴的周波数があり、低周波数側でせん断剛性率が大きく上昇することを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度目標に挙げていた強電場下でのせん断剛性率の計算を達成することが出来た。また、マクスウェル応力を異方的界面張力と見なすことにより、電場により形成されるコラム構造のサイズ選択についてのスケーリング則を導出することに成功した。このような見方は、相分離流体に及ぼす電場の効果を考えていく上で有用であると期待される。さらに、研究期間終了後の課題として見据えていた導電率の効果についても取り掛かり、成果を挙げることが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
強電場下で形成されたコラム(ストライプ)構造が、強せん断下でどのように振る舞うかを調べる。このような電場と流動場が競合する状況について、二次元における予備的なシミュレーションを行ってきたが、その詳細な解析と理論的考察から、メソスケール構造とレオロジーとの関連を明らかにしていきたい。
|
Causes of Carryover |
国際学会での成果発表を予定していたが、研究の実施に予想以上に時間がかかり、実施期間中に発表をすることが出来なかった。しかし、成果は着実に出てきているため、次年度の国際学会で発表をすることを考えている。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に国際学会で成果発表をするときの旅費として利用する。
|
Research Products
(12 results)