Research Abstract |
本研究は,(1)爆発的連続噴火に伴う波動場の観測データの解析,(2)噴出物の物質科学的解析と(1)の結果の比較,(3)室内実験による模擬波動場の形成と解析方法の開発を3つの柱としている。 (1)新燃岳2011年噴火の爆発的連続噴火の波動解析を行う準備として,地震データから,大気の圧力変動(風・空振)による変動を除去する解析を行った.連続噴火中の地面の振動に対し,空振がその場の地面をたたいて揺らす効果が少なからず寄与しているが,これまでの研究では定量的な評価がされていなかった.新燃岳の観測点の場合には,約40km離れた桜島火山の爆発による空振を用いて,地面の応答を評価することができる.この応答関数を用いて地震データを補正し,新燃岳2011年噴火の3回の爆発的連続噴火による空振と地震のエネルギー分配を調べた.その結果を用い,それぞれの噴火において,主要な振動発生メカニズムが異なること,特に,2回目の噴火の発生の原因がマグマ内部の物質的変化にある可能性を指摘した.また,地震と空振の相関関係を用い,連続噴火の波動場からその中の爆発現象の波動場を見分ける見通しを立てた.本成果は,国際火山学地球内部化学会の総会(2013年7月鹿児島市)において,招待講演として発表することになっている. (2)本課題での物質科学的解析の役割は,地震・空振データからとらえられた,爆発的連続噴火でのマグマ破砕過程の変化について,その変化をもたらした火道でのマグマ挙動を突き止めることである.物質科学的解析を観測データと比較できる精度で,火道でのマグマダイナミックスの時間変化が解析できるよう,2011年噴火時の緊急調査で定義されていた堆積ユニットを,さらに細かく区分し,新たにサンプルを採取した.さらに堆積ユニットのキャラクタリゼーションの第一歩として,堆積物の粒度分布測定,堆積物を構成する軽石のみかけ密度測定を進めた. (3)粘弾性流体の底部から連続的に空気を送り込み,大気中に空気の抜ける音を模擬波動場として使用する予定である.今年度は,過去に行った実験の波動場を詳細に解析し,音の発生メカニズムを明らかにした.本成果は,国際学術誌に論文として投稿し,受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,1年目は室内実験を中心に行い,2年目から観測データの解析を行うことになっていた.しかし,物質分析の進め方の都合から先に観測データの解析を進めることにした。両者は順調に成果をあげている.室内実験は,予定より遅れてはいるが,今年度中にある程度の結果を出す目処は立っている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は,主に,噴出物の物質科学的解析を行う研究支援者の雇用に使用する.また,室内実験のための消耗品と,研究代表者,及び,研究支援者が研究成果を発表するための旅費・英文添削・印刷費等に使用する.
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