2012 Fiscal Year Annual Research Report
高間隙水圧下での蛇紋岩のすべり特性とスロー地震の関連性
Project/Area Number |
24340105
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
片山 郁夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10448235)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | スロー地震 / 摩擦則 / 蛇紋岩 |
Research Abstract |
プレート境界で発生するスロー地震には,水の存在が大きく関わっていると考えられているが,その物質学的メカニズムについてはまだよく分かっていないのが現状である。本研究では,蛇紋岩のすべり特性がスロー地震の発生と密接に関わっているとの仮説のもと,すべり特性が流体の存在(間隙水圧)によりどのような応答を示すか定量的に評価し,スロー地震の発生メカニズムの解明に貢献することを目的としている。沈み込みプレート境界で発生するスロー地震は,プレート間固着域であるアスペリティを縁取るように分布することからも,その素過程の理解はプレート境界型地震の発生プロセスの理解につながると期待されている。 本年度は広島大学設置のガス圧式三軸試験機の改良に取り組み,高温高圧高水圧での蛇紋岩の変形実験を行った。その結果,蛇紋岩断層ガウジでは有効圧の法則が成り立りたち,摩擦強度が間隙水圧の存在により顕著に低下することが明らかになった。このことは,地下の高封圧な環境でも間隙水圧が上昇し低有効圧状態では変形は摩擦に支配されることを示唆している。低有効圧状態を作るメカニズムとして,マントル先端では下部地殻を構成するはんれい岩がシール層となり水を保持し,高間隙水圧帯を形成する可能性が挙げられる。そのような環境では,剪断変形に伴う脱水反応により不均一な構造が形成されスロー地震が発生していると予想される。このモデルは数値計算により得られたスロー地震発生シミュレーションの結果とも調和的である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画どおりに進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
速度状態依存の摩擦構成則では,速度ステップテストにより,臨界すべり量を求める実験がいくつか報告されているが,間隙圧変化時の臨界変位量を検討した実験例はほとんどない。スロー地震の発生では,速度変化ではなく,間隙圧変化がすべりを誘発している可能性が高いため,本実験では間隙水圧をステップ変化させ,定常摩擦への遷移状態を検証する。次年度は,間隙水圧の変化量と臨界すべり量との関係を系統的に調べるのに加え,蛇紋岩とそれ以外の造岩鉱物の間に臨界すべり量の違いが見られるか検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も主に実験にかかる設備品と消耗品として使用する。なお,消耗品に計上していた予算が若干のこっていたので,基金の一部を次年度に繰り越した。
|
Research Products
(11 results)