2013 Fiscal Year Annual Research Report
三次元大気放射モデルを用いた全球雲解像放射収支の解明
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24340116
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
太田 芳文 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 研究員 (70442697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 春磨 山口大学, 理工学研究科, 助教 (90374909)
岩渕 弘信 東北大学大学院, 理学研究科, 准教授 (80358754)
櫻井 篤 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20529614)
関口 美保 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 准教授 (00377079)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 気象学 / 大気放射 / エネルギー収支 / モデル化 |
Research Abstract |
本研究課題では、高速かつ高精度の広帯域3次元大気放射モデルの開発を行い、雲の三次元放射効果を定量化することを主目的としている。 平成24年度までに開発した放射エネルギー収支解析用の3次元モンテカルロ放射伝達モデルの検証と比較を行った。太陽放射について、他モデルによる計算結果と比較して開発した放射伝達モデルを検証したところ、完全3次元系でのモデル計算結果に顕著なバイアス誤差はないことが確認できた。また、3次元と鉛直1次元放射モデルの計算結果を比較し、雲内部では拡散放射による放射加熱の分布が両者で大きく異なることが分かった。加えて、1次元放射モデルでは雲頂での放射加熱が3次元放射モデルよりも著しく大きくなる傾向があり、雲解像スケールでは大きなバイアス誤差をもたらすことが示唆された。 同様に、平成24年度までに開発した明示的放射伝達計算手法の検証を行うため、仮想的な大気中における放射輝度及び放射フラックスの計算結果をモンテカルロ法と比較した。その結果、当手法によって放射フラックスについては妥当な結果が得られることが確認できた。一方、放射輝度については条件によって値に差異が見られ、原因として特に数値拡散の影響が大きいことが推察された。 より大規模な3次元空間の放射計算を行うために、最新の雲解像力学モデル(SCALE-LES)のデータを取得して整備した。また、観測に基づいた現実的な雲の全球3次元分布を得るため、衛星観測データ(MODIS, CloudSat)とモデル再解析データ(MERRA)の収集・整備を行った。加えて、粒子表面粗度を考慮した非球形の氷粒子による散乱特性の最新データベースに基づいて、広帯域放射計算用の光学特性データを参照表として作成した。水雲モデル・ガス吸収モデルについても広帯域計算に適したものを開発・整備し、放射エネルギー収支解析を行うためのモデル要素を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では広帯域3次元大気放射モデルの開発を行い、雲の3次元放射効果を定量化することを主目的としている。平成25年度には、モデル中核部分であるモンテカルロ法と明示的解法による3次元放射伝達計算モデルの性能評価と改良、及び水雲・氷雲・ガス吸収等の光学モデルの開発・整備を行い、3次元放射効果の見積もりを行うための基盤となるモデル開発がほぼ完了した。また、最新の雲解像力学モデルによるシミュレーションデータや衛星観測データなど、取得に時間のかかる大規模なデータの収集・整備が順調に行えたことから、当初計画通り順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗状況を踏まえ、本研究課題の主目的である広帯域3次元大気放射モデルを使った3次元放射エネルギー収支の見積もりを行う。まずは雲解像力学モデルによる領域スケールのシミュレーションデータを利用して雲場の種類や空間スケールの違いが放射エネルギー収支の分布に与える影響を調査する予定である。しかし、力学モデルによるシミュレーションデータでは現実の雲場を必ずしも正確に表現できていない懸念があることから、観測に基づいた現実的な雲の全球3次元分布を得るために衛星観測データとモデル再解析データの取得・整備を進め、新たにそれらを用いた放射エネルギー収支の評価方法の検討を行う予定である。 具体的には研究代表者を中心として研究者全員で協議して研究を進め、モデル開発・実験結果等について、国内外の学会・学術論文等での研究発表と、最新の学術情報の収集に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度(H25)は昨年度より引き続いてモデル開発・データ整備に特に重点を置いたため、研究成果の海外学会での発表、論文投稿、及び英文校正等のために計上していた経費の執行が当初予定より少なかった。 基本的には使用目的を変えずに平成26年度に執行する予定であるが、新たに衛星観測データや再解析データの収集・整備を予定しており、そのためのデータ記憶装置の購入が必要となる可能性があるため、経費の配分については平成26年度の交付申請分と合わせて調整する予定である。
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