2014 Fiscal Year Annual Research Report
微量元素をプロキシとした初期原生代の大気酸素上昇パターン解明
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24340132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 隆 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00253295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 庸平 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00359168)
宇都宮 聡 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40452792)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大気進化 / 風化 / 微量元素 / 古土壌 / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
25-20億年前の初期原生代に地球史上最大の地球表層環境変動イベントが起こった。微量元素(V, Cr, Co, Ni, Cu, Zn, Mo)は様々な酸化還元ポテンシャルを持つので、当時の大気酸素濃度に応じ、それぞれ特有の挙動を示すことが期待できる。これらの微量元素の海洋での濃度は大陸からの流出を直接反映していると考えられているが、大陸からの流出についての確実なデータはない。28-18億年前の古土壌の微量元素の挙動を解析し、海洋での濃度との比較を行い、大陸からの流出を直接反映しているかの検証を行うとともに、初期原生代の大気酸素進化についてのより整合的な仮説を提唱する。 (1)前年度に引き続き、微量元素の大陸と海洋での濃度変動の相関を検討した。大陸から海洋への微量元素の流出には2つのタイプがあった。(i) 新始生代に流出し、終期古原生代に保持、(ii) 新始生代に保持され、終期古原生代に流出する微量元素である。微量元素により多少のズレがある(主に酸化還元ポテンシャルの差によると考えられる)ものの、上記(i), (ii)のタイミングは同一であった。これらは海洋での濃度変化と必ずしも一致してない。つまり、海洋での濃度変化は大陸からの流出を必ずしも反映してない。また、初期原生代の大気酸素は徐々に(対数単位で)上昇した仮説を支持した。 (2)大気酸素をコントロールした黄鉄鉱の溶解実験では、黄鉄鉱の溶解速度が溶存酸素濃度の0.5乗に比例するという従来の結果とは異なる結果を得た。大気酸素濃度が10E-5気圧までで、0.7乗に比例することがわかった。これは低酸素では、黄鉄鉱がより早く溶けるということを意味する。また、低酸素では、溶解に伴う硫酸イオンの重要性が下がり、準安定な硫黄種が重要になることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微量元素の大陸と海洋での濃度変動の相関については、ほぼ結論が出て、海洋での濃度変動のみから大気酸素進化を論じていたことに警笛を鳴らすことができた。黄鉄鉱は微量元素の主たるホスト相と考えられているが、極低酸素下での溶解実験が残った。
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Strategy for Future Research Activity |
黄鉄鉱の極低酸素下での溶解実験を完了させ、今までのデータをまとめて、地球史で最も重要な課題の一つである初期原生代酸素上昇モデルを、新たでかつ包括的な形で提唱する。
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Causes of Carryover |
黄鉄鉱の極低酸素下での溶解実験を完了する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
黄鉄鉱の溶解実験に必要な消耗品(高圧ガス、薬品など)と一部の分析の依頼分析料として使用。
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Research Products
(4 results)