2013 Fiscal Year Annual Research Report
炭化水素プラズマ中の高次ラジカル・イオン制御による機能性膜の堆積法の開発研究
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24340144
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
篠原 正典 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80346931)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プラズマ-固体表面相互作用 / 赤外吸収分光 / 高分子量 / 炭素膜 / ベンゼン環 |
Research Abstract |
炭化水素ガスを用いたプラズマ化学気相法(PECVD)による炭素系膜の堆積では、高分子量(高次)の化学種も重要となるはずであるが,これまでは低分子量のラジカルで成膜プロセスを考えられることが多かった。そこで,プラズマ中で生成される高次のラジカル・イオンの種類、それらの基板上での反応を詳細に調べることを目的とした。反応では特に,膜堆積を行う際の最前線となるプラズマ‐固体表面相互作用を詳細に焦点をあて,膜堆積において,どのようにラジカルの構造や化学結合状態の変化していくかについて明らかにする。原料分子の主要な官能基や構造を保ったままで、さらに電気的特性を阻害する欠陥等の存在しない膜堆積法を確立する。そのために,これまで開発してきた,堆積中のプロセスを「その場」「実時間」で計測できる多重内部反射赤外吸収分光法を用いて,反応計測を行った。 そこで,高分子の基本構造となるベンゼン環に注目し,ベンゼン環が1個のベンゼン分子,ベンゼン環が2個連なるナフタレン分子を原料としたプラズマ化学気相堆積プロセスについて,調べた。特に,ベンゼン分子については,水素を重水素置換した原料も用いて,詳細なる解析を行った。その結果,次のことを明らかにできた。ベンゼン分子は,分子構造を壊さずに吸着するモードがある。さらに,吸着開始の初期には分子構造を壊さずにランダムに吸着するものの,吸着が進みベンゼン分子で膜表面が覆われるにつれ,膜中の炭素の2重結合と気相から供給されたベンゼン分子が吸着し,膜中の2重結合の密度を減少させるモードがあることが分かった。さらに,重水素化されたベンゼン分子と通常のベンゼン分子との比較より,ベンゼン分子中の炭素-水素結合の切断,その他の炭素-炭素結合の切断の割合について検討できることを示した。ナフタレン分子による成膜プロセスについてもデータ収集を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高分子の基礎となるベンゼン分子を用いた膜堆積過程を詳細に反応解析に成功し,反応モデルを構築できた。さらに,ベンゼン環が2個連なるナフタレン分子の堆積過程についてもデータ取得に成功し,反応解析についても成功しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ベンゼンの反応モデルを専門家を説得できるゆるぎないものとする。さらにナフタレンの反応モデルを構築する。さらに高分子とプラズマの反応解析を行い,高分子量のラジカル・イオンと固体表面の相互作用に関して,明らかにいていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高分子原料を真空チャンバー内に導入させることが難しく,試行錯誤で対応したため,時間がかかった。さらには,赤外分光光度計やマニュプレータ・チャンバーや真空ポンプなどの装置の故障などの課題が生じた。 高分子原料を真空チャンバーに導入する蒸着装置の購入のほか,真空装置の大幅な修理のため,真空部品,真空ポンプの購入などで対応する。さらには,赤外分光高度計の修理もしくは購入を行う。
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