2013 Fiscal Year Annual Research Report
磁気感受性を担う細胞内タンパクの分光学的同定と空間特性
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24350002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ウッドワード ジョナサン 東京大学, 教養学部, 准教授 (80526054)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スピン化学 / 磁場効果 / クリプトクロム / ラジカル・ペア反応 / 顕微吸収分光 |
Research Abstract |
本研究は,数mT程度の磁場環境下で細胞内の光受容タンパクが関与するラジカル・ペア反応をin vivoで追跡することにより,弱磁場が生体機能に及ぼす影響に関して知見を得ることを目的としている.平成25年度における研究の主たる目標は,前年度に引き続き,実細胞を対象にパルス状の弱磁場下で空間分解的に吸収分光測定を可能とする磁場効果顕微分光装置(Magnetic Field Effect Spatially Resolved Spectrometer: MFESRS)の開発と調整であり,以下のような進捗および成果を得た. (1) 開発したMFESRS装置は分光計測系と顕微計測系から構成されており,分光計測系を用いたin vitro測定によって,フラビンモノヌクレオチド(FMN)/ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)系の磁場効果の溶媒粘度に対する依存性を観測した.既存の報告例に較べて,より低磁場領域における高感度な測定が可能となり,高粘度溶媒では光励起で誘発される吸収セル内の対流が磁場効果曲線の形状に影響を及ぼすことが判明した. (2) 9,10-ジメチルアントラセンが励起錯体を形成する光反応系について,磁場効果の励起時間依存性を測定し,連続光源による励起条件下ではラジカル・ペア形成を含む遅い循環反応によって磁場効果が増強される可能性を示した. (3) 実細胞を用いたin vivo 測定に向けて,Manchester大学との共同研究によってキイロショウジョウバエ由来のクリプトクロム(青色光受容体タンパク)の調製を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は,MFESRS装置の開発・調製に関して,(1)光励起で誘起される吸収セル内の対流,(2)光ファイバー端面における反射に由来するレーザー干渉ノイズ,(3)磁場変調に由来する信号雑音など,設計段階では想定できなかった課題が明らかとなり,in vivoで高精度の顕微分光を実現するために,更なる工夫と多くの調製時間が必要となった.そのため,年度当初に予想した計画に較べ「③やや遅れている」と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に明らかとなったMFESRS装置の課題を克服し,装置開発およびFMN/HEWL系の磁場効果の溶媒粘度依存性の成果を学会誌に発表する.並行してキイロショウジョウバエ由来のクリプトクロムを調製し,MFESRS測定を行う.さらに,野生型およびクリプトクロムをノックアウトしたシロイヌナズナの細胞を試料として,MFESRS測定を実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1) プロジェクトに任命されるポスドク研究員は2年間の雇用となるが、助成金が交付された後、最初の6か月間は適任者が見つからなかった。2012年9月に採用後に給与の支払いが始まった為、プロジェクト3年目となる今年8月頃まで支払いが必要となる。 2) このプロジェクトは、これまで他の先生の実験室を借りた状況で行ってきている。ここには機器を設置する光学テーブルがあり、またいくつかの装置も一時的に借りている。こういった状況の下、テーブルや防振装置の購入が遅れてしまっており、今後、機器を自身の新たな実験室に移動させる必要がある。 ポスドク研究員の給与支払い。(2年契約の終了時まで) 実験用テーブルや防振装置、その他プロジェクトに必要な機器やソフトウェアの購入。(これまで、これらの物を借りて使用していた為)
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Research Products
(2 results)