2013 Fiscal Year Annual Research Report
分子内レドックスプロセスを基軸とする効率分子変換法の開拓
Project/Area Number |
24350021
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大森 建 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50282819)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | レドックス / 分子内反応 / 酸化 / 還元 / 天然有機化合物 / 光反応 / 熱反応 |
Research Abstract |
本研究は、有機化合物を酸化数式という側面から注目し、新たな効率的分子変換法を見出すことを目指している。具体的には、分子に内在する各官能基の潜在的酸化特性を利用し、外部反応剤を作用させることなく目的とする官能基の酸化様式を整えることを可能とする「分子内レドックスプロセス」を鍵とした多官能性分子の新規合成法の確立を目指す。本年度(平成25年度)は、昨年度の研究結果を踏まえ、引き続き、芳香族化合物の持つ特異な反応性に注目した新規分子変換法を開拓すべく検討を行った。具体的には、ベンゾキノン誘導体を各種合成し、その分子内レドックス反応を行うことを試みた。その結果、空気中、キセノンランプ光照射下においてベンゾキノン構造に様々な炭化水素基を直接結合させた化合物のベンジル位の炭素が選択的に酸化されることを見出した。そしてこの反応を応用し、ベンゾキノン骨格とスピロ構造をあわせもつ天然物、スピロキシンCの全合成に成功した。 本年度はさらに、β-ケトエステルから容易に調製可能なジオキシノン誘導体を用いた新規分子変換法の開拓を行った。その結果、ジオキシノン誘導体を対応するエノールシリルエーテルに変換し、それを加熱すると逆[4+2]型付加環化反応が進行し、対応するアレン誘導体が収率よく得られることを見出した。さらに得られた各種アレンに対するニトロンの1,3-双極子付加反応を検討したところ、目的とする反応が進行した後に、予期せぬN-O結合の開裂が起こり、アミド誘導体が得られることを見出した。この反応はこれまでに無い分子変換を可能とするものであることから、今後詳細な検討を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究提案の段階において立案した反応開発については、まだ目的とする分子変換の実現には至っていないものの、本課題に関連した予期せぬ興味深い知見が得られた。当初予想した反応性が引き出せなかった原因としては、想定していた合成中間体が不安定であったことが挙げられる。しかし、その点が逆に幸いし、これまでにない分子変換を実現可能とするあらたな方法論の開拓の糸口をつかむことができた。また、応用面においても成果が得られ、今回見出した光反応を利用して天然物の合成を行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はこの知見を活かし、一部研究方針を変更しつつも、当初の目的に則した方法論の開拓を進めてゆく予定である。さらに本年度開発したアレン誘導体の新規合成法については不斉合成への展開を図り、早期に研究成果をとりまとめ、論文発表を行う予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
経年劣化による性能および品質低下が予想された実験器具(消耗品)および機器(備品)が、通常の使用限度(期間)を越えても利用可能なものがあり、その更新に計上していた分の予算が必要なくなり、当初計上していた経費が一部来年度に繰り越されたため。 昨年度から繰り越された経年劣化による性能および品質低下が予想される実験器具(消耗品)および機器(備品)の更新あるいは修理費用に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)