2014 Fiscal Year Annual Research Report
エステルの反応性制御による新規で直接的な炭素ー炭素結合構築手法の提案
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24350047
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場 章夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 理事 (20144438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西本 能弘 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30550115)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機合成反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度と二年度において開発したエステルの還元的アルドール反応の知見を活かして、エステルのカルボニル基に連続的かつ選択的に異なる二種類の炭素求核種を付加させる反応の確立を目指した。基幹化合物であるエステルにワンポットで二種類の異なる炭素求核種を反応させることができれば、短工程での高官能基化アルコールを合成可能となるために、有機合成分野において大きな意義がある。様々な検討を行ったところ、ハロゲン化ガリウム触媒存在下、エステルに対して、シリルエノラートとシリルシアニドを反応させると、エステル部位とシアノ部位が導入された高官能基化アルコールが得られることを見出した。これら二つの求核種を同時に加えたにもかかわらず選択的かつ連続的に異なる求核種が付加しており、同じ求核種が付加した生成物はほとんど得られなかった。ハロゲン化ガリウムの中程度のルイス酸性とケイ素求核種の温和な求核性が反応達成の鍵である。実際に、典型的なルイス酸であるフッ化ホウ素や塩化アルミニウム、四塩化チタンなどでは目的物は得られなかった。また、本反応系を環状エステルであるラクトンにも適用することでアルコールではなく、高官能基環状エーテルが得られることが判明した。ラクトンから環状エーテルへの変換反応を利用したspiro oxacyclic γ-lactamの短工程合成にも成功した。反応機構に関しては、いくつかの推定中間体を別途合成し、検討したところ、シリルエノラートの付加が先行して起こり、シリルシアニドの付加が起こることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていたエステルを直接用いた新規有機合成反応の開発に成功した。前年度までの還元的官能基化だけではなく、今年度は異種炭素求核種同時導入反応を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、様々なカルボニル化合物(アミド、チオエステル、カルボン酸など)に対して、異種炭素求核種の同時導入反応の開発を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初においては、エステルに対してヒドリド求核種と炭素求核種の二種求核種の連続的な付加反応だけを想定していたが、予想外にも、二種類の炭素求核種の連続付加が効率よく進行することを見出した。本研究において、求核種の一般性の拡大は極めて重要であるために、エステル、アミド、チオエステル、カルボン酸など様々なカルボニル化合物に対して検討する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究に必要な反応試薬、有機金属試薬、有機溶媒、金属触媒、NMR用重溶媒の購入に使用する予定である。
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