2013 Fiscal Year Annual Research Report
有機小分子に誘発される発光性ナノ金属種の自己集合を利用した機能開拓
Project/Area Number |
24350063
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小西 克明 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (80234798)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 分子認識 / クラスター / 発光 / センサー / 自己集積 |
Research Abstract |
本研究では、有機小分子との相互作用を通じて形成される「PEG修飾型発光性ナノ金属種(クラスター)の自己集積体」の形成機構を解明するとともに、「自己集積化にともなう発光増強」を利用して特異な光化学的応答性を示す機能物質を創出することを目的とする。平成25年度の研究においては、24年度に得られた様々な鎖長を有するPEG鎖を無機骨格表面に直結させた一連の半導体性硫化/セレン化カドミウムクラスター群について、その発光応答性を議論する上で不可欠となる基本的な光物性および疎水性フェノールに対する応答機能に関する調査を行なった。その結果、明確なPEG鎖長依存性が吸収スペクトルにおいて観察され、PEG鎖のコンホメーションがクラスターの電子特性に影響を与えることがわかった。さらに詳細な検討を進めたところ、PEG鎖のコンホメーション(コイルまたはへリックス)との相関性が観察され、クラスターの無機骨格でのポリマー鎖の二次構造がクラスターの電子特性に影響することが示唆された。続いてビスフェノールAに誘起される集合体形成活性を調査したところ、PEG鎖長依存性はほとんど観察されず、表面ポリマー部分の立体構造の影響は無視できることがわかった。以上の検討と並行して、クラスター間架橋構造形成を誘起すると期待される分子ユニットを組み込んだクラスターの構築を検討した。その中で、ボロン酸部位を導入したクラスターが単糖類とのエステル結合形成に伴って、10 nm程度の集積体を形成し、会合誘起型の発光増大を示すことを見いだした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、平成24年度に得られたクラスターの集積化とそれに伴う発光増強に関する知見を基盤として、クラスターの集積化を誘起する分子認識ユニットを戦略的に組み込んだPEG修飾クラスターを構築し、特定のゲストに対して選択的に発光応答する系の構築を目指した。しかし研究の過程で、発光特性と強く相関する吸収スペクトル特性がPEG鎖長に依存することが見いだされ、その詳細の検討をまず行なった。結果として、PEG鎖のコンホメーション(コイルまたはへリックス)はクラスターの電子特性に影響を与えるが、集合体形成活性や発光応答特性にはほとんど影響を与えないことを明らかとした。また、PEG修飾クラスターにボロン酸ユニットを組み込み、ジオールとのエステル結合形成を利用した集合体形成、発光応答の検討を行なった。その結果、複数のジオール部位を有する単糖類との錯形成を通じて架橋構造を形成させることで正の発光応答が観察された。この結果は、会合誘起型発光増強がPEG修飾クラスターにみられる一般的な現象であることを明示するとともに、本研究でめざす自己集積による発光応答系の構築のおける分子認識手法の有用性を示すものであり、今後の展開における重要な基盤となる。よって本研究はほぼ当初の予定通り進行しており、おおむね順調に推移していると評価される。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24,25年度の成果を基盤として、標的物質との相互作用を通じて架橋構造が誘起するような相互作用ポイントをクラスター表面に戦略的にくみこみ、センシングなど応答機能の展開を図る。具体的には、25年度に見いだしたボロン酸部位を導入したクラスターの糖に対する発光応答活性にならって、ダイオキシン系の環境汚染物質、アドレナリン、セロトニンなどの生体関連小分子を、多点で認識、捕捉し、集積化を促進する系の構築をめざす。また、これまではクラスター集積体の形成プロセスに着目してきたが、生成した集積体自体の機能化にも注目し、ナノゲルとして用いて機能応用を図る。しかし、生成した集積体は本質的に疎水相互作用などの弱い引力的相互作用で支えられているため、外部環境の変化によって容易に崩壊することが予想される。そこで共有結合的な架橋部位を導入し、集積体の全体としての構造を固定化する。このクラスターナノゲルの構造を電子顕微鏡や動的光散乱などを用いて調べて、もとの構造からの変化を考察するとともに、pH, 有機溶媒など各種外部環境に対する安定性を調べるともに、、種々のゲストの取込み活性およびそれに応答した発光強度の変化を評価するとともに、その保持量、保持能力、外部刺激による放出活性などreservoirとしての機能についても調べ、将来的な材料設計に向けた情報を蓄積する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
合成・精製手法の効率化および同定手法の簡略化を進めた結果、薬品、カラム充填剤などの消耗品の出費を圧縮することができた。 余剰分については、翌年度の研究費とあわせて、目標とする発光応答系の精密分子設計や集積構造固定化による発光ナノゲル作製のための消耗品やシミュレーションソフト等の物品費に充当する。
|