2012 Fiscal Year Annual Research Report
光吸収型有機骨格を有する堅固な金属錯体デザインと触媒反応開発
Project/Area Number |
24350068
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安田 誠 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40273601)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 錯体 / 光反応 / 反応場 / ルイス酸 / 共役 |
Research Abstract |
現代の大量消費社会において、炭素資源および金属資源の枯渇は大きな問題である。これに対し、自然エネルギー利用と豊富金属種利用はこの問題を直接的に解決する唯一の方法である。本申請では「光エネルギーを吸収し、分子を活性化し、新しい反応場を生み出し、高効率反応が生起する」という過程を設計することで、上記の本質的な問題解決をめざす。戦略として、光吸収部位を有する有機骨格で金属を包み込む形の新しい金属錯体を合成し、金属周辺へ特異的に光エネルギーの効果を誘発する新しい反応場を構築しようとするものである。堅固な分子形状を有する錯体を設計し、適切な位置に光吸収型有機骨格と反応活性点となる金属部位を配することで、低分子の酸化・還元や、高効率な炭素-炭素結合形成反応を光エネルギーで促進・制御することをめざす。 1)非平面ビアリール骨格のヘテロ原子介在による共役拡張の原理探究から、peri位にOHを有するビアリールが、予想外の長波長吸収・発光を示すことの原因を基底/励起状態の計算を行い、ベンゼン環上の電荷分布変化を見積もった。その結果、電子移動に伴う静電相互作用が分子内の構造変化を促し、予期しない長波長発光を示すことを見いだした。 2)介在へテロ原子の種類とその性状の解析から、ふたつの独立したアリール部位間に介在するヘテロ原子として、窒素を用いた。窒素上の置換基により、発光波長の変化が見られた。これは、電子移動の効率と一致する結果であった。今後により詳細で定量的な解析が必要である。 3)多座配位子を指向した多置換非平面共役化合物の合成から、多座のOHを有するビアリール型化合物をを合成した。単座に比べて大きな長波長シフトが見られた。窒素体の合成を行っている段階であり、その合成と解析により、発光波長のチューニングを行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビアリール骨格のperi位のヘテロ原子の発光に対する影響を詳細に解析することができ、今後の研究遂行の堅固な学術的下地となった。また、単座体の窒素置換体の合成と物性評価の成功により、発光波長の微調整の概念が正しいことが実証され、次のステージに進めることが可能と成った。 このようなことから、計画は順調に進展しており、おおむね従来の計画通りに研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
多座配位子を指向した多置換非平面共役化合物の合成にやや難航している。多段階の低収率条件であれば成功することがわかっており、本来の研究は進められるが、今後の応用を考慮して、大量に合成できる手法の開発を同時に進める必要があると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
特異な光物性を生み出す有機分子の合成に多数成功し、またそれをもとにした金属錯体の合成にも多くの検討を行うことができた。その中で、フッ素置換体が予期せぬ選択的反応触媒としてはたらくことがわかり、その知見が本研究の大きな進展を期待させる状態となった。予期せぬ結果をあたえたフッ素置換体の現象を明らかにし、本研究の本題である光吸収型金属錯体の触媒への応用検討を行っていく必要が生じた。 フッ素置換体の予期せぬ生成により、その物性検討を行うことで金属錯体の合成計画が少し遅れているが、研究の本質の知見の積み重ねが多く得られたため、次年度は一気に多くの錯体合成と物性検討を行える状況にあり、その研究経費として使用する計画である。
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Research Products
(6 results)