2014 Fiscal Year Annual Research Report
光吸収型有機骨格を有する堅固な金属錯体デザインと触媒反応開発
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24350068
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安田 誠 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40273601)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 錯体 / 光反応 / 反応場 / ルイス酸 / 共役 |
Outline of Annual Research Achievements |
ルイス酸性を精密に制御することは、有機合成化学においてきわめて重要である。本研究では、豊富な金属であるホウ素を有効に利用し、かご型錯体にすることで、その物性をチューニングしようと検討している。これまでは、ベンゼン環を基幹部位としたかご型配位子を用いいたが、あらたに複素環の導入を試み、その物性チューニングを行った。 ベンゾフラン骨格をフェニル基にかえて導入した錯体の合成に成功した。市販のメトキシベンゾフランを原料として、脱保護ののち、OH基のオルト位を選択的に臭素化した。OHをメトキシ保護したのちに、ブチルリチウムによるハロゲンーリチウム交換でリチオ化し、クロロギ酸エチルと縮合させ、トリアリールカルビノールを得た。アルコール部位の還元とOMe基の脱保護により、前駆体のトリヒドロキシ体を得た。これをBH3THFと反応させると、目的のベンゾフラン導入型のかご型ホウ素錯体が得られた。 しかしながら、この錯体のトータル収率が極めて低く、その各ステップの効率の向上を検討する必要が生じた。もっとも困難な過程はクロロギ酸エチルとの縮合反応である。様々な条件を検討したところ、ごく低温で長時間反応させることが必須であることがわかった。また、試薬の滴下速度がきわめて重要であることがわかった。現在は、満足いく収率で錯体をえることができている。 このベンゾフランに対して、置換基を導入する検討を行った。各種ハロゲン化を行い、電子求引効果を付した錯体の合成へと導いた。しかしながら、ホウ素試薬との錯形成が困難で、効率の良い錯形成が進行しないことがわかった。得られた単純ベンゾフランの錯体を用いて、触媒反応を検討し、いくつかん系が効率よく進行することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
かご型ホウ素錯体に、ベンゾフランを導入する検討を行った。様々な条件を検討した結果、目的の錯体を合成することに成功した。また、この錯体がいくつかの反応において、高い触媒活性を示すことがわかった。問題点としては、錯体の収率が中程度であり、あと少しの効率の向上がもとめられる。また、反応触媒としての展開として、より本系の独自の特徴を出せる系の探索が必要である。 一方で、ベンゾフランの導入型錯体が形成できたことから、これまでにない新しい展開がみえてきた。たとえば、ベンゾフランは高い双極子モーメントを有している。すなわち、分子間の相互作用が期待出来る。このため、ベンゾフランの酸素原子が、かご型ホウ素錯体がもともと有している外部配位子をキックアウトして、多量化する可能性がある。この種は、リガンドフリー錯体と同等であり、ルイス酸触媒としては高い活性を示すことが予想される。溶媒効果等を検討して、ベンゾフラン系に特有の活性の発見を目指していきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ベンゾフラン導入型のかご型ホウ素錯体の収率向上がもとめられる。クロロギ酸エチルとアリールリチウムの反応は、温度に敏感なために、地道に条件を検討していくべきである。また、高い双極子モーメントを有するベンゾフランは、外部配位子を除去する能力があるために、実際に減圧下で錯体を保持し、リガンドフリー錯体の単離を行いたい。これまで、リガンドフリー錯体は合成されておらず、かご型ホウ素錯体の化学に新しい展開を広げることができると強く期待出来る。 また、計算化学により、このベンゾフラン錯体の物性に関する理論的な考察を加えていき、今後の分子設計のヒントを得、新しい錯体を合成していく予定である。 触媒反応を数多く試し、この触媒の適性をはかる。また、ベンゾフランの光吸収能力を生かした反応を見出すべく、光のOn/Offの比較をおこなっていきたい。すでに予備実験により、一部差の出る系を見出しており、早期に体系化したいと考えている。
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Causes of Carryover |
かご型ホウ素錯体の合成検討を行っている途上で、クロロギ酸エチルとアリールリチウムの反応の効率が悪く、その条件検討に多くお時間を費やした。結果として、本ステップの合成には成功し、一定の結果は得られた。しかしながら、本来予定していた多くの経費を必要とするスペクトル的な検討をする段階には進まなかった。 以上が次年度使用額が生じた主な原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに、合成における大きな障害であった前駆体合成に活路が見出されたため、今後は、本来の計画通りのスペクトル的な物性研究に入っていっことができる。また、理論計算のサポートを得つつ、新しいデザインの合成も、次々と合成する準備が整っている。これらの手順で、従来の計画通りの検討が進む予定である。
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Research Products
(5 results)