Research Abstract |
逐次的ボロン酸エステル反応をうまく制御すれば,生成するポリマー構造をサブミクロンスケールで自律組織化できる。本研究の目的は,その自律組織体の多彩なモルフォロジー特性とホウ素の化学的性質に着目し,金ナノクラスターの担体利用へ機能展開を試みることである。平成24年度は,以下の項目を検討した。 1.ボロン酸エステル高分子担体の最適化と金ナノ粒子の担持 1,4-ベンゼンジボロン酸とペンタエリスリトールのTHF溶液を48時間静置したところ,2.3±0.3μmの粒径をもつ花弁状のボロネート粒子(BP)を得た。ATR-FTIRおよび固体NMR測定より,2,4,8,10-tetraoxa-3,9-diboraspiro-【5.5】undecaneを構成単位となるポリマー形成が示唆され,そのポリマー体のzigzag型パッキングからなる組織体であることがPXRDシグナルから類推された。そのBPは熱的に安定であったので,有機一無機ハイブリッド触媒の開発を意図して,金の担持を試みた。析出還元法を用いた結果,BP上に粒径が2.7±0.6nmの金ナノ粒子を担持したハイブリッド体(Au-BP)を単離できた。他のジボロン酸誘導体を使用した場合も,単分散系粒子を得た。 2.ニトロスチレン類の選択的水素化反応の高効率化検討 ハイブリッド体(Au-BP)を用いて,4-ニトロスチレンの水素化反応を実施した。反応条件として,Auが基質の1.1mol%になるよう触媒量を調整し,当該基質のトルエン分散中,0.5MPa,100℃で実施された。その結果,高選択的なニトロ基還元反応が進行した。事実,22時間後,転化率96%,4-アミノスチレンを96%収率で得た。 3.シンナムアルデヒドの選択的水素化反応' α,β-飽和アルデヒドに水素を付加する触媒反応は工業的に重要で,ひとつの分子の中に反応する部位が二つあるため(C=C結合とC=O結合),そのうち一方だけを選択的に反応させることが課題となっている。当該ハイブリッド触媒(Aw-BP)が当該還元反応に適用できるかどうか調査した。反応はガスクロマトグラフで追跡されるため,目的物以外の生成物としてベンゼンアルデヒド,ベンジルアルコール,3-フェニルプロパナール,3-フェニル-1-プロパナールの各検量線をひき,定量評価の準備をおこなった。予備的ながら,トルエン中,100℃,0.5MPaの水素圧下で反応を実施した結果,転化率62.5%でシンナミルアルコールを32.3%で得る一方,他の副生を7%以下に抑える選択性を示した。反応条件を精査して,触媒効率の向上をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1,4-ベンゼンジボロン酸とペンタエリスリトールの逐次的ボロン酸エステル結合から得られたポリマー粒子体(BP>を担体利用したハブリッド体は,ニトロフェノール類の還元反応に対して,触媒活性を示すことがわかった。その一方で,活性度の更なる改善や耐久性向上などの新たな課題を見出している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年後,消耗品費のうち試薬品ならびに溶媒購入費用が当初見込みよりも少なくすみ,繰り越す研究費が発生した。それは次年度の物品費に加える。次年度は,種々のボロネート担体を調製し,そのモルフォロジー特性を,比表面積値を用いてパラメーター化する。これを用いてハイブリッド触媒の最適化検討をおこなう。また,あらたな課題として,キラルな界面を有するボロネート粒子を調製する。
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